本研究は平均的な日本人集団である久山町住民の65歳以上高齢者を対象に、様々な共変量の影響を考慮した上で、認知症の発症・進行に寄与する口腔関連リスク因子の検討を行った。これまでほとんど報告が存在しなかった唾液中の酸化ストレスマーカーはアルツハイマー型認知症の者で低値であることが示された。また、これまで認知症発症との関連が多く報告されていた歯数については、脳全体の萎縮度と関連し、歯の本数が減少するに従い高い萎縮度を示した。その一方で、海馬の特異的な萎縮と歯の本数は有意な関連を認めず、歯の喪失がアルツハイマー型など特定の病型の認知症に特異的なリスク因子であることまでは確認されなかった。
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