研究課題
本研究では、高齢者に対して補綴治療後に栄養食事指導を実施して行動変容を起こすことによってはじめて栄養状態が改善されるという仮説を立て,高齢義歯患者の治療前後において,嚥下機能評価ならびに食事と栄養摂取の評価を行い,栄養食事指導の介入の有無による栄養摂取状態を比較検討することが目的である。高齢者3名の有床義歯補綴治療に際して,一連の義歯製作に伴う栄養指導を行った。義歯製作前に咀嚼機能検査と献立表による食事記録を行い,義歯製作治療後にも咀嚼機能検査,献立表による食事記録を行った。その結果を基に,管理栄養士による栄養食事指導を行い,献立記録と実際の食事摂取量の把握のための実際の食前の食事の写真を依頼した。新義歯の装着によって食事摂取状況には大きな変化がないことがわかったが,その後も,継続した献立表・食事写真をもとにした栄養指導を行うことによって,栄養状態は改善された。以上より,歯科医師から得られた摂食機能評価と食事記録を利用した栄養評価により管理栄養士がテーラーメイド型の栄養食事指導を行うことによって,歯科医療従事者が管理栄養士や医師と連携して,摂食機能状態,食事摂取状況を把握した栄養食事指導が実施することで,健康やQOLの維持・向上ならびに疾病の予防に栄養管理という観点からも貢献できるものと結論付けた。今後はさらに,高齢者や虚弱者に対する食支援として,口腔管理(衛生と機能)に栄養管理を加えた医療管理を実現していくための体制作りに貢献し,社会に広げていくことが今後の課題である。
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Nutrients
巻: 11 ページ: 2020
10.3390/nu11092020