研究課題/領域番号 |
17K17381
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
宮久保 あや子 昭和大学, 歯学部, 助教 (50643706)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 口腔内細菌 / 内頚動脈狭窄症 / メタゲノム解析 |
研究実績の概要 |
近年、内頚動脈狭窄病変部より口腔内細菌が検出した報告を認め、口腔細菌叢と動脈硬化の関連が注目されているが、明確な結論が得られていない。本研究は進歩が著しい高速シークエンサーを用いて、内頚動脈内膜に付着した粥状プラークと口腔細菌叢をメタゲノム解析し、内頚動脈狭窄症の発症の一つに口腔内細菌が関連していることを解明することを目的としている。 本年度の研究実績は、口腔細菌と内頚動脈狭窄症の内膜に付着したプラーク及び血栓のサンプルを的確に採取し、メタゲノム解析を行うにあたり条件検討を行いプロトコール作成を行った。本研究のプロトコールとして、まず採取した検体よりDNA抽出を行い、内頚動脈狭窄症の内膜に付着したプラーク及び血栓中に細菌が存在しているのか検討することから施行した。全ての細菌が持つとされている16SrRNA領域プライマーを設計し、PCR(V4領域の増幅)を行い、PCR産物を電気泳動し増幅物の有無を確認した。得られた配列データの相同性検索から菌種の同定を行った。 平成29年度までに得られた症例サンプルは55例採取し、DNA抽出47例、16SrRNA-PCR施行は44例行った。PCR産物から11例何らかの細菌がいる可能性が示唆された。そのうち、6例に次世代シークエンスを更に行い菌種の同定を行った。口腔内と内頚動脈内膜に共通して検出されたのはStreptococcus属、Corynebacterium属、Actinomyces属、Neisseria属の5例を認め、他にも様々な菌種を確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
内頚動脈狭窄症患者のアテローム性プラークと同一患者の口腔内プラークのサンプル採取と口腔内や生活環境の評価方法を行うに当たり最適なプロトコール作成は確立された。検体数も55例と順調に採取している。アテローム性プラーク内で口腔内細菌が存在している可能性がある検体が55例中11例と認めているが、検出された口腔内細菌叢が1検体につき多種多様な菌叢を認めた。検体数としては数は比較的多く集まっているが、更に口腔内と内頚動脈内膜に細菌が存在する可能性が認められる検体数を増やすことが、今後求められると考えられ上記進捗状況となった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方針としては、更に検体数を増やし、口腔内・内頚動脈内膜に細菌が存在する可能性のある検体数を増やし、細菌の同定を行うことで菌種の相関性を検討していく必要があると考える。 更に、 Real-time PCRを用いた解析を行う。メタゲノム解析で得られた菌種と存在量の正確性を、菌種特異的プライマーを用いた定量qPCR法にて定量し、得られた結果がメタゲノム解析の結果を反映しているかを検討する。また、サンプル間で菌種の存在量を比較解析し、循環器疾患患者に共通する菌種を明らかにする。 原因菌を明らかにしたのち、その原因菌による内頚動脈狭窄症発症のメカニズムを培養細胞用いた感染実験を行い、細胞内での生存、貪食細胞による貪食回避、サイトカインの産生誘導能への影響等を理解し、原因菌の持つ 新規病原因子を明らかにする。患者から採取した生活環境に関するメタデータと、解明された循環器疾患の原因菌から、個々に対応した効率的な口腔ケア臨床プロトコールの確立を提案する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、サンプル採取のプロトコールとサンプル採取がメインの為、費用が差ほどかからなかった。次年度ではメタゲノム解析や研究成果の発表または論文作成を行うため次年度に使用することとなった。
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