研究課題/領域番号 |
17K17386
|
研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
元開 早絵 日本歯科大学, 生命歯学部, 助教 (60792877)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 脳血管疾患 / 摂食嚥下 / ニューロフィードバック / リハビリテーション |
研究実績の概要 |
平成29年~30年度においては、脳血管障害を有しない健常者10名を対象に、以下の3条件においてfNIRS装置Spectratech OEG-16APDを用いて前額部の脳血流測定を行い、口腔周囲の運動が脳機能に及ぼす影響を測定した。条件1) 舌運動課題時(舌を挺出し左右口角に達するように繰り返し動かす)、条件2) 舌運動課題想起時、条件3)他者の舌運動映像視聴時である。10名の被験者から得られた脳酸素化ヘモグロビン(Oxy-Hb)変化データは、BRain Analyzer ver.2.0(B.R.system社製)を用いて加算平均を行い、各課題条件におけるOxy-Hb変化量比較測定を行った。 安静時と条件1時の比較では、課題前後の Oxy-Hb変化量を比較したところ、10名中9名に有意な増大を認めた。安静時と条件2時の比較では、課題想起時においてはOxy-Hb変化量に差は見られるものの、10名中3名にのみOxy-Hb有意な増大を認めた。安静時と条件3時の比較では、他者の舌運動映像視聴時のOxy-Hb変化量は、10名中10名全員において有意な増大が認められた。 本研究では、舌運動課題想起を行うことに比べ、視覚的に課題情報を得ることで効果的に脳機能の活性が得られると考えられた。訓練時において正しい訓練手技を実際に行えないとしても、他者の舌運動映像を視覚情報として与えることによって、効果的な脳機能の活性化を行うことができるものと考えられる。実際の運動課題実施と比較した場合、本研究での課題映像視聴では同等の脳機能の活性は得られなかった。このため、被験者に提供する映像課題の検討及び、映像視聴に加えて行う有効な手技の検討が必要であると考える。 また、実際課題映像視聴時に自分の運動課題実施をイメージしていたかどうかについては検討が必要と考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成30年度は改めて対象となる脳血管疾患後遺症患者の症例数を増やしていく予定であったが、現在在宅療養中や施設入居中の患者においては、脳の障害部位が医療情報として得られる患者で、研究協力が得られる対象が限られており、測定が遅滞している。 また、脳活性を高めるために効果的な映像課題の作製が難航しており、進捗状況が遅れる原因となった。
|
今後の研究の推進方策 |
対象患者の確保に関しては、現在連携をとっている医療施設に対して再度協力依頼を行い、対象となる脳血管疾患後遺症患者の症例数を増やしていく。 また得られた症例においては平成30年度までに作成した舌運動課題施行前後のリハビリテーション効果を客観的に評価していく。 課題画像の作製については、まず健常者を対象に更に測定回数を増やし改善を進め、脳血管疾患後遺症患者への利用へつなげていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
対象患者の確保が遅れており、必要器具の購入を行わなかったため、今年度は患者への視覚課題提示用モニターやソフトの購入、統計解析を進めるための解析ソフト(IBM社SPSS)、研究調査・成果発表に係る経費、別刷りの印刷代を予定している。
|