知的障害者が高齢化すると、既存の知的障害や先天性疾患と併せて口腔機能の低下、摂食嚥下障害、低栄養など口腔に関連する問題の発生が予測される。しかし、高齢化した知的障害者の調査・研究は十分には行われておらず、福祉サービスと医療支援の両面で対応が遅れているため継続した研究が必要である。 令和3年度に知的障害者施設への実態調査を予定していたが、新型コロナウイルスの全国的な蔓延のため施設長より調査の実施許可がおりなかったため、令和2年度に実施していたアンケートの分析を行った。 40歳以上の知的障害者を対象としてアンケート調査を実施した。基本情報として、年齢、性別、障がいの診断名、療育手帳の等級、主な生活場所について尋ねた。口腔の情報として、現在歯数、口腔の健康行動に関する質問として、かかりつけ歯科医の有無、定期歯科受診への受診の有無、1日の歯磨き回数について尋ねた。歯の本数を目的変数、年齢、性別、障害の重症度、障害の種類、主な生活場所、かかりつけ歯科医の有無、歯科医院への定期管理、主な歯磨き者を説明変数とした多項ロジスティック回帰分析を行った。 その結果、40歳以上の知的障害者の歯の本数は、年齢、障害の種類、定期歯科検診の受診の有無、歯磨き回数が関連した。知的障害者は健常者に比べて早期に多数の歯を喪失していた。定期歯科検診を受診することや1日の歯磨き回数を増やすことは歯の喪失を防ぐ可能性が示唆された。 上記の内容は、知的障害者の国際雑誌(Journal of Intellectual Disability Research)に掲載されている。
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