研究課題
褥瘡や糖尿病性下腿潰瘍などの慢性創傷の原因の1つに,創部の細菌感染が考えられている。慢性創傷の90%以上に細菌が存在することが明らかになっており、その中でも、緑膿菌は慢性創傷からよく分離される菌である。本研究では、肺での緑膿菌排除や皮膚創傷治癒を促進することが報告されているリンパ球の一つであるナチュラルキラーT (NKT)細胞が創部緑膿菌感染防御および、その創傷治癒過程に与える影響について解析を行った。野生型マウスおよび、NKT細胞欠損マウスの背部に全層欠損創を2つ作成し、緑膿菌PAO1株 1.0×10^4 個を創部に接種した。経日的に創を摘出し、両群間での創部緑膿菌数、再上皮化率、創部好中球数、サイトカイン・ケモカイン、抗菌ペプチド産生を解析した。野生型マウスに比べ、NKT細胞欠損マウスでは、創部緑膿菌数が創作成7日目に有意に増加した。再上皮化率は創作成7日目に野生型マウスに比べ、NKT細胞欠損マウスで有意に低下した。細菌排除に重要な役割を担う好中球数は、創作成3日目では、野生型マウスに比べ、NKT細胞欠損マウスで有意に増加したが、創作成7日目では有意に低下した。TNF-α、IL-1β、IL-6、IFN-γ発現は両群間に差はなかった。好中球集積を促進するサイトカインIL-17Aは創作成1日目にNKT細胞欠損マウスで有意に増加したが、5日目では有意に低下した。しかし、好中球遊走に関わるケモカインKC、MIP-2発現は両群間に差は認めれらなかった。抗菌ペプチドであるβ-defensin1発現は創作成5日目にNKT細胞欠損マウスで有意に低下し、β-defensin3は低下傾向を示した。以上の結果より、NKT細胞が創部緑膿菌排除および、再上皮化促進に働く可能性が示され、それにはIL-17A産生による、好中球集積や抗菌ペプチド産生の増加が関与する可能性が示唆された。
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Journal of Investigative Dermatology
巻: 139(3) ページ: 702-711
doi: 10.1016/j.jid.2018.10.015.