研究課題/領域番号 |
17K17397
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
上畠 洋佑 金沢大学, 国際基幹教育院, 特任助教 (00757271)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 看護学へのアクセシビリティ差 / 学問領域の地理的分布 / 看護に関するデータのインフラ化 / 看護学教員の不足 / 看護教育システムの踏襲 |
研究実績の概要 |
看護師を養成する大学数が過去24年間で22倍、入学定員は26倍に急増している。しかし、日本の医療現場を支える看護師を養成する大学の急増が社会に与える影響についての検証や研究はこれまで十分になされていない。我が国は未曾有の超高齢化社会を迎えつつある中で、看護政策研究者のみならず、養成機関である大学を研究対象にする高等教育研究者からもアプローチして複合的な視点からこの現象を明らかにすることが重要である。そこで、本研究では平成4年から平成28年までの25年間に看護師を養成する大学の急増が最も影響を与えたと考えられる3つの領域「大学経営」「地域」「医療」を対象に詳細な調査を行うことによって、今後の政策検討のための有用なエビデンスとすることを目的としている。 本研究の平成29年度研究計画では「大学経営」「地域」領域への影響について、公表されている統計資料やオープンデータを用いながら文献調査や量的調査を行うこととしていた。「大学経営」領域及び「地域」領域における主な研究成果は、全国大学一覧等をデータ化し整理したことによって地理的な学問領域の分布状況と、4年制看護系大学・学部・学科への高校生の出身地からのアクセシビリティの差を明らかにした点である。また、各種学会等への出席を通して、看護系大学に勤務する教員に予備的調査としてヒアリングを行った結果、2つの点が明らかとなった。第1に、4年制大学の看護系大学教員が不足している点、第2に看護学校または短期大学から4年制大学に改組した大学では、改組前の教育システムを踏襲している傾向がある点である。このことより、看護系大学における教員組織、カリキュラム、教育内容、ファカルティ・ディベロップメントの実施状況などにも本研究において注視することが重要であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の平成29年度研究計画では「大学経営」「地域」領域への影響について、公表されている統計資料やオープンデータを用いながら文献調査や量的調査を行うこととしている。「大学経営」領域においては、進捗に滞りはない。「地域」領域では、公表されている統計資料やオープンデータ及び地域経済分析システム(RESAS(リーサス))を用いて、都道府県・市区町村ごとに対象エリアを分けて、各種健康指標や経済指標に着目して量的な調査を行っていくこととしているが、資料の収集は完了しているが、分析に至るまでのデータ化が遅れている。この遅れは、平成29年度研究費の繰越金を用いて学生アルバイトを雇用し当該業務にあて、進捗状況を予定通りにすることとする。
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今後の研究の推進方策 |
本研究における平成30年度計画では、「医療」領域を対象にした影響について、現職の看護師や医療機関の雇用責任者を対象にアンケート・インタビュー調査を行う。被雇用者である看護師に対しては、調査会社のパネルデータを活用し大学における看護師養成教育についての意識調査を行い、大学卒の看護師が感じる就業面で感じるメリットやデメリット、大学における看護師養成教育の有用性、大学選択における要因(学費、教育内容、地域、ブランド等)について調査を行う。医療機関の雇用責任者については、約160ある大学病院の看護師長を対象に郵送によるアンケート調査を本研究者が発送、収集、分析を時前で行う。また両アンケートの分析結果を踏まえた上で、必要に応じてインタビュー調査も行う。アンケートやインタビュー調査は、所属する愛媛大学教育・学生支援機構の倫理委員会の審査にかけてから実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額42,446円が発生した理由は、当初予定していた出張が、体調不良により出張ができなかったためである。次年度の使用計画としては、人件費・謝金に該当する「資料整理、テープ起こし等」が今年度想定した以上にかかっており、今年度以上の業務を予定している次年度の「資料整理、テープ起こし等」の費用にあてる計画である。
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