本研究課題では、福島の放射線災害後に看護職(看護師・保健師)が経験した放射線に関する問題への対応困難事例を分析し、それを基にした看護職が求める教材を作成およびその教材を使用した教育とでパッケージ化し、その有効性を評価すること、また、その評価をもとに看護職および看護学生に対する放射線災害教育の在り方を考えることを目的としている。これまでに放射線災害後に福島県内で活動した看護職者、または放射線看護教育に携わっている看護職者の語り(福島県に支援に入る前の準備状況、支援に入ったときの状況、その際の心境、支援中の活動内容や活用した知識、支援活動後の自身の振り返りなど)を聴取した。研究参加者からは当時の支援内容や現在の関わり、支援に必要であった放射線に関する知識など具体的な内容が語られた。この結果から放射線災害後の看護師に 必要な能力やスキルについてまとめ、日本放射線看護学会第9回学術集会において発表した。また、日本放射線看護学会第9回学術集会および第10回学術集会において、交流集会を企画し、参加者らと看護職に対する原子力災害医療教育についての意見交換を行った。さらには、過去の事例の教訓を聴取するために、ベラルーシ共和国を訪問し、関係各所を訪ね、放射線教育についての意見交換を行い、この訪問の記録をチェルノブイリ原発事故後のベラルーシ共和国における放射線教育の内容としてまとめ、本邦の放射線教育への示唆として日本放射線看護学会誌第8巻2号にて公表した。2021年度は、今回の調査から教育教材の作成、その評価に関する一連の流れを第27回日本災害医学会総会・学術集会にて発表した。最終年度は、教育内容の整理や教材コンテンツ作成をすすめたが、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、評価するための研修会等を実施することはできず、教材の評価までは至らなかった。
|