臨地実習前後における看護大学生のクリティカルシンキング(以下、CT)を測定し、学習状況との関連を調査した。また、臨地実習中のCT使用状況と使用理由を明らかにした。全国の看護系大学の内、同意を得られた10機関795名の学生を対象に、CTの測定には尺度を用い、自由記述データはテキストマイニング分析を行った。得られた結果から以下の知見を得た。研究成果をまとめ上げ、論文として発表した。 1.臨地実習前後における学生のCT力 臨地実習前後における学生のCTを比較した結果、実習を経験することでCT力は向上することが示唆された。これは先行研究と同様の結果を示しており、看護実践の中でCTが育成されていくものと推察される。次に、学生の背景とCT力の関連についてみると、有意差を認めたのは「CTを知っていたか」「大学でCTを学ぶ機会があったか」の2項目であった。このうち、「大学でCTを学ぶ機会があったか」に関しては、同じ機関であっても回答が異なる場合が見られた。つまり対象がCTという言葉を知っているか、否かにより得点差が生じたと考えられる。 2.学生が臨地実習中にCTを用いる状況 臨地実習中にCTを使用する状況として、【問題解決】【意見交換】【患者理解】【看護展開】【内省】の5つのカテゴリーが抽出された。高得点群と低得点群の特徴語を比較すると、高得点群は、看護ケアの中で自己を振り返るときにCTを用いることが多く、低得点群は、カンファレンスなどの意見交換の場でCTを使用していることが分かった。臨地実習において学生のCT力を伸ばすためには、看護実践の場でいつどのようにCTを発揮すればよいかを具体的に教える必要がある。学生がCTを用いる状況を教員が認識することで、学生の体験を教材化することが可能となる。その教材化された実習体験を蓄積していくことが、学生のCT力を伸ばす一助になると考える。
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