最終年度は質的手法を用いて、被災した在留外国人の災害関連ヘルスリテラシーにおける課題および被災した在留外国人の支援における課題を明らかにすることを目的とした。 結果より、被災した在留外国人の災害関連ヘルスリテラシーにおける課題は、6カテゴリ【情報源が限られている】【複雑な日本語を理解できない】【判断材料が乏しい】【危機的状況を乗り切る】【尊厳を保つことが困難】【孤立しやすい】と16サブテゴリが導き出された。事例では、外国人は先入観や思い込みが影響し支援を受けられないだろうという誤った判断をした為、自ら支援を受ける機会を逃した例や、安全な場所に避難をしなければならないという知識が無いことで適切な避難行動に結びつかない例が認められた。また、被災した在留外国人は、情報を適切に理解し情報の信頼性を評価する段階で課題が生じていたことが明らかとなった。 被災した在留外国人の支援における課題では、外国人を支援する際に課題となった支援者側の要因として、3カテゴリ【平時の業務体制では対応できない】【スタッフの健康管理が困難】【支援の方向性が見いだせない】が導きだされた。さらに、外国人を支援する際に障害となった環境要因としては、2カテゴリ【多様性の包摂】【ホットラインの整備】が導き出された。 被災した在留外国人の災害に関連するヘルスリテラシ-における課題の背景には、母国における被災経験が無いことや、災害に関連する概念を知らないことが示唆された。有事に適切な避難行動をとるためには、言葉の意味を理解するのみならず、言葉から適切なリスク事象を連想し行動レベルで想起することが求められる。在留外国人に対して日本の災害文化を理解し、適切に対処できるよう実践的な減災教育を提供する機会が必要であることが示唆された。本成果は、在留外国人に対する減災教育プログラムを構築する上で有益な基礎資料となることが期待される。
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