研究実績の概要 |
院内病児保育施設の設置と利用の現状およびその病院で就業している未就学児を持つ看護職の就業継続意識を明らかにすることを目的とした。平成30年度は、前年度に不足があった標本抽出のため、①看護管理者、②未就学児を持つ看護職に対して追加調査を行った。 まず、看護管理者に対する調査では、院内病児保育施設の設置や運営内容、設置に対する認識などについて質問した。結果、院内病児保育の運営そのものは設置施設の取り決めにより、職員配置数や施設の利用可能時間、利用制限などに多少の差が生じていたものの、約8割は職員の就業支援として有効であるとの認識をもっていた。 次に、未就学児を持つ看護職に対する調査では、職場への定着可能性と対象者の属性(基本属性、家庭状況、職場状況、院内病児保育施設利用状況)との関連をみるため、「看護師の定着可能度分析尺度」(平井ら,2003)を用いて、各群間(定着可能群、定着不安定群、定着不可能群)における差の検定と多重比較を行った。この結果、「職場での仕事と育児の両立のしやすさ」、「子育てに対する管理者からの理解」、「仕事と子育てを両立させているモデルとなる上司・同僚の存在」、「有休・年休希望への融通の良さ」が有意に関連していた。 院内病児保育施設の存在は、子育てと仕事の両立において非常に有益な仕組みとの印象がもたれている反面、設置・運営は各施設に委ねられている未整備な側面があった。また、病児保育は就業支援の1つとして有効であるものの、必ずしも就業継続へ直結する要素とは言えないと推察される。就業継続に結びつくであろう要素として、緊急時の1つの選択肢と捉えた上で、その他の支援内容を整備していく必要性が考えられる。子育てと仕事の両立に理解が得られる環境や、自分よりも先に子育てと仕事の両立を図っている人々の存在が勇気付けとなり、就業継続を支える要素となっている可能性が示唆された。
|