本研究の目的は、がんになった父親における希望と困難の現状把握と多職種共同支援の開発である。平成30年度は2段階の調査を行った。第一段階として、全国がん診療連携拠点病院を対象に郵送式無記名自記式質問紙調査を行った。全国11施設、54名から質問紙を回収した(回収率:79.4%)。調査内容は年齢、がん診断時期、家族構成の属性、相談者などのサポート体制の有無、QOL(FACT-G)、ストレス対処能力(SOC-13)、困難と希望(平成29年度に文献レビューで得られた内容各13項目)とした。その結果、QOLやストレス対処能力の特徴として、先行研究と比較し低い傾向にあり、困難と希望は共に持ち合わせていることが明らかになった。男女別の傾向としては、男性は相談者がいない割合が高く、QOLやストレス対処能力も女性より低かった。 第二段階として聞き取り調査を行った。参加者は5名、面接時間は約52分であった。面接内容を質的記述的に分析をし、困難は【自分のせいで子どもに負担を与えていること】【治療によりいつも通りの生活が出来なくなること】【子どもとの心の距離が離れてしまうこと】【子どもにとってよくない状況を想像してつらい】【子どもにとって良い親でいられないこと】【子どもの将来への不安】の6カテゴリー、希望は【親としての在り方が治療に向かう気持ちを支える】【子どもを育てる責任感を感じること】【子どもと日常生活を過ごすこと】【子どもの成長を感じること】【子どもが自分の存在価値を取り戻してくれること】の5カテゴリーが得られた。 がん治療中の親への支援は、がん治療中で親役割が果たせない場合でも親の存在価値は変わらないことを伝え、困難を軽減する必要がある。さらに、親子のつながりが安定するように親子関係についても相談に乗れる環境を作ることが重要であると示唆された。
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