本研究の目的は、高齢がんサバイバーが若者に対するがん教育推進の一端を担い、がん予防を進めるという社会的役割を持って活躍するモデルを開発することである。 2018年度は、2017年度に引き続き、高齢がんサバイバーの社会的役割を担うことに対するニーズの明確化を図るため、A病院の外来化学療法センターに通院中で、条件(①65歳以上のがん患者、②言語的コミュニケーションが可能、③Performance Statusが0から2)を満たし、研究参加の同意が得られた者を対象に半構造化面接を実施した。得られたデータから逐語録を作成し、Berelson.Bの内容分析の手法を参考に質的記述的に分析した。その結果、「家族のために役割を果たしたい」、「自分の自己実現のために役割を果たしたい」、「他者に迷惑をかけずに過ごすことが役割」、「がん体験を社会貢献に活かしたい」というニーズが明らかになった。これらのニーズが明らかになった一方で、対象者が定年退職後や子育てを終えている世代であるため、「自分が担う役割はもうない」というネガティブな声もあった。 また、若年世代向けのがん教育のために必要な要素と課題を明らかにするため、医学中央雑誌Web版を用い、“がん教育”を検索ワードとして2013年~2018年に発行された文献検討を行った。その結果、「がん教育に対する国民の知識不足」、「教員の知識不足」、「がん教育に係る資源不足や負担の増大」、「がんに対するネガティブなイメージの定着」や「がん教育を受ける対象への配慮」ががん教育の課題として抽出された。今後は海外文献も含めて検討を行い、がん教育のために必要な要素と課題を明確化する必要がある。上記インタビュー結果、文献検討の結果を統合し、高齢がんサバイバーが若者に対するがん教育推進モデル作成を行う。
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