研究課題/領域番号 |
17K17444
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研究機関 | 千葉県立保健医療大学 |
研究代表者 |
坂本 明子 千葉県立保健医療大学, 健康科学部, 助教 (50634515)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 心不全 / 終末期 / エンドオブライフ / ケア移行 |
研究実績の概要 |
本年度は文献検討を主として行った。MEDLINE・CINAHAL・医学中央雑誌およびハンドサーチによって「慢性心不全患者」「エンド・オブ・ライフ」「終末期」「ターミナル」「緩和ケア」をキーワードに、慢性心不全患者へのエンドオブライフケア(EOLケアとする)の実践状況について調査した。調査した結果、症例報告や実践振り返りが大半を占め、慢性心不全患者へのEOLケア実践に関する文献はごく限られていた。さらに、終末期におけるACP(アドバンスド・ケアプランニング)の開始時期やケア移行に関する文献は見当たらなかった。文献検討から、慢性心不全患者への実践内容として看護師はアセスメントを実施し、呼吸困難・浮腫・疼痛・倦怠感などへの症状緩和のための基本的な援助を行うものの、「死への心理的適応援助」「スピリチュアルケア」については、身体的な症状にとらわれ精神的な面に向き合えないと感じていることがわかった。また、根底には「医師と看護師ともに心不全患者の終末期に対する緩和ケアの導入の困難感」が存在した。 以上の文献検討より、慢性心不全患者のEOLケア移行は「医療者が感じている緩和ケア導入の困難感」から、理想とされるタイミングより遅れている可能性があることが示唆された。また影響する要因として看護師自身に予後不良という認識はあるものの、薬剤の効果で病状が一進一退し予後が定まらないことや医師が説明しない状態での介入に躊躇する心情が考えられた。来年度はこれらを踏まえて、慢性心不全終末期患者へのEOLケア内容および終末期への移行期に関する看護師の判断の実際についてインタビューを行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は文献検討を中心に行い、倫理審査やデータ収集フィールドの調整を行う予定であったため、現時点での進捗状況を評価するならば、計画通りといえる。またインタビューを行うにあたり、文献検討より看護師自身が予後に対する不確実性をもっており、かつ医師が説明しない状態での介入に躊躇している現状を伺い知ることができたので今後はこれをもとに計画的にインタビューを実施していく.
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今後の研究の推進方策 |
来年度は当初の計画通り、慢性心不全患者へのエンド・オブ・ライフ・ケアー終末期への移行期に関する看護師の判断とケアの実際についてインタビューを行い、看護師が行ったケア移行時期の判断とその理由、実際のケア内容がどのように変化したかの2点を軸として看護実践を抽出していく予定である。 今年度はおおむね計画通りに進んでいるが、計画の遂行具合によってはインタビュー時期が前倒しとなる可能性を見越して計上していたテープ起こし代が執行されなかったため残額が発生している。来年度は予定通りインタビューを精力的に実施し、看護実践の抽出を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由として、当該年度の計画の遂行具合によってはインタビュー時期が前倒しとなり年度末に実施する可能性があったため、見越して計上していたテープ起こし代、旅費、謝金代が執行されなかったことがあげられるが、研究遂行は想定範囲内で実施できている。次年度は予定通りインタビューを実施する予定であり、その際に使用していく。また、心不全の緩和ケアについて先進的な取り組みをしている地域の勉強会で知見を得るため、旅費としても使用していく予定である。
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