本年度は最終年度であった。心不全患者が急性増悪と緩解を繰り返しながら徐々に悪化する療養経過をたどるなかで、予後予測がつきにくく、明確ではない終末期に移行する時期やケア内容を明らかにするため、 研究1:「終末期ケアへの移行のきっかけとなった、看護師がキャッチした患者の変化はどのようなものであったか、またそれらから行った判断内容」 研究2:「終末期への移行判断をしたのちに、看護師はどのようなエンドオブライフケア実践を行なったのか」について、循環器専門病院または大学病院の熟練看護師にインタビューを実施し、以下の成果を得た。 【研究1:終末期ケアへの移行のきっかけとなった患者の変化と看護師の判断内容】移行の判断内容は<表情や目の力から覇気がないと感じ、大事にしてきた価値・信条を主張しなくなったと感じた>など9つの大カテゴリが抽出された。得られた研究成果を第16回日本循環器看護学会学術集会(2019年11月東京)にて発表し、最優秀演題賞を受賞した。現在、内容の論文化をすすめている。 【研究2:終末期への移行判断をしたのち、看護師はどのようなエンドオブライフケア実践を行ったのか】終末期ケアへの移行を判断した後に看護師が心不全患者に対して行ったエンドオブライフ看護実践内容について、分析を行った。分析には210コードを用いた。6段階に渡るラベル編成を繰り返し、最終的に10個の大カテゴリから5つのテーマに集約された。熟練看護師は、【取りきれない苦痛と苦痛緩和のための模索】【治療決定に関する話の場づくりと医師への説明促し】【予後に関する患者家族の認識把握と迷いの中での ACP 躊躇】【限られた裁量下での家族へのエンドオブライフケア】【低下した心機能にあわせた患者らしい過ごし方のための試行錯誤】などのエンドオブライフケア実践を行っていることが明らかとなった。これらは、学術集会で発表後、論文化を進める予定である。
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