研究課題/領域番号 |
17K17446
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研究機関 | 高知県立大学 |
研究代表者 |
田中 雅美 高知県立大学, 看護学部, 助教 (50784899)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | トランジション / ICU / 看護師 |
研究実績の概要 |
ICU看護師13名を対象としたインタビュー内容から、多く抽出されたワードとして、「怖さ」、「人間関係・コミュニケーション」、知識の関連性やケアの成果から感じる「おもしろさ・楽しさ」、「尊敬する先輩看護師」、「患者の変化からの気づき」、「任せられる感覚」、「先輩からの『できている』の言葉」、「振り返り」があった。 ICU新人看護師は重篤な患者を対象とするがゆえに、知識や技術の曖昧さやケアによる患者への影響度から怖さを感じ、とにかく勉強する対処行動をとっていた。そして、職場での人間関係形成を大きなきっかけとして、先輩や医師、臨床工学技士への質問や意見交換ができるようになることで視野が広がり、自分の考えやケアに自信を持てる機会が増えていた。ICUは患者の身体変化を読み取るための検査データや医療機器などの指標が多く存在し、病態と所見、ケアと所見が目に見えてつながる特徴があり、新人看護師にケアの成果の実感や知識がつながる楽しさを与えていた。さらに、患者の病状悪化や回復などの変化について振り返ることで、些細な身体変化に気づくことの重要性を認識し、尊敬する先輩と自分の行動を比較しながら回復を促す援助について考えていた。一方で、新人看護師の多くは自らの成長に鈍感であり、担当患者数の増加や重症患者の担当になることを通して任せられる感覚や、できるようになったと周囲から伝えてもらうこと、先輩と一緒に振り返ることで自身の成長を客観的事実として捉えていた。 データ分析の内容から、ICU新人看護師のトランジションの全体像に加え、新人看護師に特徴的なターニングポイントや気づきがあることがわかった。新人看護師のトランジションを促進する支援方法を明らかにするためには、ターニングポイントや気づきをもたらす場面に焦点を当てたデータ収集を追加する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ICU新人看護師のトランジションを明らかにするために、13名のICU看護師を対象にインタビューを行い、データ分析を行った。データ分析の内容から、新人看護師のターニングポイントや気づきは看護師によってさまざまであることがわかった。当初の予定では、ICU教育プログラムと新人看護師のトランジションプロセスを比較し、効果的な支援方法を導き出す計画だったが、ターニングポイントや気づきのタイミングや種類がさまざまであることから、場面に絞った支援方法を明らかにする方が有用であると考え、研究計画を見直した。新人看護師が健全なトランジションを進むためには、トランジションプロセスの中で、個人の内的変容を促すきっかけとなるターニングポイントや、新人看護師自身が機会に気づき成長に関与することが重要である。そのため、ターニングポイントや気づきをもたらす場面に焦点を当てたインタビュー調査を追加する計画に修正した。
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今後の研究の推進方策 |
目指す研究成果としては、OJTで活用できるトランジション支援方法を明らかにすることである。支援者側が新人看護師のターニングポイントや気づきの場面を逃すことなく、振り返りなどの支援を行うことができれば、効果的に新人看護師を成長に導くことができると考える。そのため、当初の予定を変更し、新人看護師個々のターニングポイントや気づきの場面に焦点を当てたインタビューを実施する。収集データの分析から支援場面の検討を行い、複数のシナリオを作成する研究プロセスは変更せず、より対象に応じた支援方法を明らかにするために、シミュレーションによる支援方法の妥当性の検討については対象範囲を限定して研究を進めることにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
データ分析内容から研究計画を変更する必要があり、インタビュー調査のための費用が必要となる。また、研究成果を公表するための旅費、論文投稿の費用などの執行を予定している。
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