本研究はTransitions Theory を基盤にICU 新人看護師のtransition経験を明らかにし、ICU 新人看護師の看護実践能力向上支援プログラムを開発することを目的とした。13名のICU看護師へのインタビューにより、ICU新人看護師のtransition経験は個別性が高いことがわかり、ICU新人看護師教育プログラムの要件との照合により、ICU新人看護師のtransition経験に沿った支援プログラムを導き出す従来計画は効果的でないと判断した。そこで、新人看護師のtransitionに欠かせないターニングポイントや気づきの場面について、ICU看護師への追加インタビューを行う計画に変更したが、covid-19感染拡大により、再度計画変更を余儀なくされた。そのため、ターニングポイントや気づきの場面抽出の観点から、インタビューデータの再分析を行った結果、支援の本質は支援者による新人看護師のtransition状況の理解であり、新人看護師の状況を捉えることのできるICU看護師が支援者となること、OJTでの支援の抽出が重要であることを確認した。最終年度では、OJTで可能な支援内容と阻害要因について、ICU新人看護師教育に携わる看護師を対象に、フォーカスグループインタビューを実施した。OJTで可能な支援内容として、新人看護師の様子や反応から捉えた看護観を後押しする、重症患者への実践を言語化することで知識と現象のつながりを促す、スタッフとの関係形成の程度によって関わり方を変更する等が抽出された。また、支援の指標がないことや、支援者側の保守的な姿勢、技術・疾患で進捗をはかる文化などの阻害要因が抽出された。この結果を踏まえて支援プログラムの枠組みを作成し、スーパーバイズを得て修正した。今後は作成した枠組みを使用したアクションリサーチにより、支援プログラムの開発を進める。
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