研究課題/領域番号 |
17K17448
|
研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
高石 雅樹 国際医療福祉大学, 薬学部, 講師 (50453410)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | マイトマイシンC / 血管外漏出 / 皮膚傷害 / 罨法 / 副腎皮質ホルモン剤 / チオ硫酸ナトリウム / メタロチオネイン |
研究実績の概要 |
マイトマイシンC(MMC)は静脈注射時に血管外漏出すると皮膚傷害を引き起こすため、この皮膚傷害に対する処置法である冷罨法及び温罨法と、治療薬である副腎皮質ホルモン剤及びチオ硫酸ナトリウムの傷害抑制効果を解明すると共に、血管外漏出による皮膚傷害や血管外漏出誘発に対する新規予防法を確立することを目的として実施している。 1) MMCの細胞傷害に対する冷罨法の抑制メカニズムの解明について検討した。正常ヒト皮膚線維芽細胞(SF-TY細胞)にMMCを23℃(冷罨法を想定)及び37℃(罨法非処置を想定)で24時間曝露し、乳酸脱水素酵素(LDH)を指標にした細胞傷害性を測定した。また、SF-TY細胞にMMCを23℃及び37℃で24または72時間曝露し、アポトーシスにより引き起こされるDNA断片化を測定した。これらの結果より、MMCが引き起こす細胞傷害は曝露温度を23℃にすることで、ネクローシスと共にアポトーシスも抑制することが明らかとなった。従って、冷罨法がMMCによるネクローシスとアポトーシスを共に抑制することが示唆された。 2) MMCの細胞傷害に対するメタロチオネイン誘導剤の予防効果について検討した。ヒト肝がん細胞(HepG2細胞)に硫酸亜鉛を24時間添加し、その後MMCを24時間曝露して、細胞生存率を測定した。同時に、MMC曝露時の細胞内メタロチオネイン濃度を定量した。その結果、硫酸亜鉛をあらかじめ添加することで細胞内メタロチオネイン濃度が増加し、これらメタロチオネイン濃度が増加した細胞ではMMCによる細胞生存率の低下が抑制された。従って、あらかじめ誘導合成されたメタロチオネインがMMCの細胞傷害性を抑制する可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マイトマイシンCによる皮膚傷害を経時的に捉えることができ、この皮膚傷害ではネクローシスと共にアポトーシスも認められ、同時にこの傷害メカニズムとして酸化ストレスの関与を明らかにした。そして、この皮膚傷害の抑制に冷罨法、副腎皮質ホルモン剤及びチオ硫酸ナトリウムが有効性を示す可能性を見出した。さらに、メタロチオネインをあらかじめ誘導合成しておくことで、マイトマイシンCの皮膚傷害を予防できる可能性が示唆された。一方で、マイトマイシンC自身が血管内皮を傷害し、血管外漏出を引き起こす可能性を見出した。従って、計画した研究内容をおおむね予定通り実施することが出来た。
|
今後の研究の推進方策 |
マイトマイシンCによる皮膚傷害メカニズムについて、炎症性サイトカイン濃度を定量することで検討する。そして、マイトマイシンCによる皮膚傷害に対する冷罨法の抑制メカニズムについて、炎症性サイトカイン濃度、酸化ストレスの指標であるマロンジアルデヒド濃度及び抗酸化系因子の変動を確認することで検討する。また、マイトマイシンCによる皮膚傷害に対する副腎皮質ホルモン剤及びチオ硫酸ナトリウムの抑制メカニズムについても同様に、炎症性サイトカイン濃度、マロンジアルデヒド濃度及び抗酸化系因子の変動を確認することで検討する。さらに、マイトマイシンCが引き起こす血管外漏出誘発に対するメタロチオネインを利用した予防効果について、細胞生存率及び細胞傷害性を指標に検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度は、冷罨法や副腎皮質ホルモン剤及びチオ硫酸ナトリウムの併用による細胞傷害抑制効果について、炎症性サイトカインの定量により検討する予定である。これらの研究では、細胞の大量培養が必要であり、かつこれらの定量用試薬が多数必要となる。そのため、試薬類の購入に多くの研究費を使用する。
|