マイトマイシンC(MMC)は静脈注射時に血管外漏出すると皮膚傷害を引き起こすため、この皮膚傷害に対する処置法である冷罨法及び温罨法と、治療薬である副腎皮質ホルモン剤(HDC)及びチオ硫酸ナトリウム(ST)の傷害抑制効果を解明すると共に、血管外漏出による皮膚傷害や血管外漏出誘発に対する新規予防法を確立することを目的として実施している。 1) MMCの細胞傷害メカニズムの解明について検討したところ、MMCは臨床用薬液の希釈溶液においても細胞傷害性を示し、この傷害は短時間の曝露から認められ、長時間持続することが明らかとなった。また、この細胞傷害には、酸化ストレスが関与することが明らかとなった。さらに、投与ミス等の血管外漏出が無い場合でも、MMCは血管内皮を傷害し、血管外漏出を引き起こすことが示唆された。 2) MMCの細胞傷害に対する冷罨法の抑制効果とそのメカニズムの解明について検討したところ、23℃での曝露では細胞傷害性は軽減され、41℃での曝露では細胞傷害性は増悪された。そして、曝露温度を23℃にすることで、ネクローシスと共にアポトーシスも抑制することが明らかとなった。従って、冷罨法がMMCによる細胞傷害を抑制し、このときネクローシスとアポトーシスを共に抑制されることが示唆された。 3) MMCの細胞傷害に対する治療薬の効果について検討したところ、STはMMCによる細胞傷害性に対して抑制効果を示し、これにHDCを併用することで増強される可能性が示唆された。 4) MMCの細胞傷害に対するメタロチオネイン(MT)誘導剤の予防効果について検討したところ、硫酸亜鉛をあらかじめ添加することで細胞内MT濃度が増加し、これらMT濃度が増加した細胞ではMMCによる細胞生存率の低下が抑制された。従って、あらかじめ誘導合成されたMTがMMCの細胞傷害性を抑制する可能性が示唆された。
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