重症患者の生命予後の大きな改善に伴い、集中治療室での治療後の長期アウトカム悪化に関連しうる障害の集合概念としてPost Intensive Care Syndrome(PICS)が提唱された。低侵襲治療等の治療介入因子の検討と共に、全人的救急医療の検討は、重症疾患回復後の生活の質(QOL)改善に寄与するものと考える。本研究の目的は、三次救急初期治療(初療)に求められる看護を、重症疾患後の患者のQOLを見据え、ヒューマンケアリングの見地から明らかにすることである。急性心筋梗塞(AMI)患者に着目し、AMI患者が救命救急センターに搬送されてから集中治療室や手術室へ移動するまでの三次救急初療において必要なヒューマンケアリングの要素を抽出する。また、その結果を用いて救急看護師のヒューマンケアリング実践評価スケール(Human Caring Scale for Emergency Care: HCSE)の作成を目指す。 今年度は、昨年度実施した三次救急初療に従事した経験のある熟練看護師への半構造化面接で得られたデータを内容分析し、三次救急初療で看護師が重要と考えて実践している具体的なヒューマンケアリングの要素を抽出し、HCSE看護師案を作成した。続いて、三次救急初療において協働する医師と救急救命士、救急治療を受けて社会復帰したAMI患者への半構造化面接を行い、HCSE看護師案への意見を得た。その意見をもとにHCSE看護師案を修正し、HCSE案を作成した。HCSE案の信頼性・妥当性の検証を行うため、Web調査会社を通して、計300名(救急初期治療においてAMI患者の治療に従事した経験のある医師100名、看護師200名)に対して調査を行った。研究計画の全過程を終了し、データの分析を行っている。
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