研究課題
ストレスのネガティブな効果を緩和する性格特性であるレジリエンス因子に着目し、家族介護者が有するレジリエンス因子が患者の死にゆくプロセスや死別に伴うストレスによる精神的苦痛に対して防御因子として機能し、死別後の精神的健康に影響するか否かを評価することを目的として本研究を実施した。2017~2018年度は4施設の緩和ケア病棟にご協力を得て、入院された終末期がん患者の家族介護者に対して、総計317名の方に自記式質問紙を配布し291名より返信を得た。2018年度~2020年度にかけて遺族調査を実施し、最終的に108名より返信があり、そのうち8名が回答拒否、19名が回答者の性別、続柄、年齢が一致していないため除外し、71名がベースラインデータと遺族調査のデータの連結による解析対象となった。患者が緩和ケア病棟に入院中において、家族介護者が中等度以上の抑うつ症状を有する割合は47.0%であった。一方で、遺族調査の時点で、家族介護者が中等度以上の抑うつ症状を有する割合は15.2%であった。死別前のレジリエンスは因子は死別前後の抑うつの変化に影響し、保護的に作用していることが示唆された。一方で、死別前のレジリエンスは複雑性悲嘆のリスクや外傷的ストレス後成長に影響していなかった。2022年度はベースラインデータを用いて副次的な解析を行った。死別前後の抑うつの変化に対し死別前のレジリエンスが症状を改善する方向に作用していることが確認されたため、緩和ケア介入により改善する可能性が指摘されているコーピングに着目し、コーピングとレジリエンスの関連について探索的に検討を行った。積極的コーピング、受容、肯定的再解釈、計画、ユーモアを普段からコーピングとして使用する傾向のある方はレジリエンスが高く、行動的諦め、自己非難、否認を利用する傾向のある方はレジリエンスが低かった。
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Journal of Pain and Symptom Management
巻: 65 ページ: 273~284
10.1016/j.jpainsymman.2022.12.012