研究課題/領域番号 |
17K17468
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
鮫島 敦子 信州大学, 学術研究院保健学系, 助教 (50759363)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | オキシトシン / 唾液 / 愛着 / 精神的安定性 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、オキシトシン(以降OXT)について妊娠・分娩・育児期における母親の唾液中OXT濃度の推移を測定し、児への愛着形成および疲労・ストレスを含めた精神的安定性との関連を検討することである。平成29年度は下記の3点を実施した。 1.妊娠(妊娠36週~40週)・分娩(分娩第1期進行中)・育児期(授乳前・中・後および産後1ヶ月)の母親14名に対して唾液採取を行い、OXT濃度測定を行った。唾液採取方法およびELISAを用いたOXT濃度測定手順の安定性を確立することが出来た。妊娠・分娩・育児期(授乳前・中・後)では産後1ヶ月に比較して、産褥入院中授乳後の唾液中OXT濃度が有意に高くなっていた。 2.対照群として非妊娠女性15名の唾液採取を行い、OXT濃度測定を行った。 3.児への愛着形成に関する質問紙調査を1の対象者に対して実施した。児への愛着形成を測る尺度としては、花沢が開発した対児感情評定尺度等を用いた。不安を測る尺度としては、Spielbergerが開発し、肥田野らが作成した新版State-Trait Anxiety Inventory(新版STAI)を用いた。対児感情評定尺度接近得点は、妊娠末期より産褥期に有意に高く、愛着形成が示されたが、唾液中OXT濃度と児への愛着との間に相関は認めなかった。 以上のことについて、平成30年度以降の研究計画において資料となる基礎的なデータを得ることが出来た。さらにデータを集積・検討していく予定である。なお、以上の一部分を第58回日本母性衛生学会で発表した。今回得られた結果を検討し、血液中OXTとの相関や、OXT値に影響を与えると言われているコルチゾール値の測定を行うことが、信頼性のある結果につながると考えた。そのため、研究計画を修正し、次年度以降は唾液および血液中OXT・コルチゾール値の測定を行っていくこととする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度に検討予定であった唾液中オキシトシン濃度の測定方法はおおよそ確立しつつある。機器の使用方法等安定して行うことが出来ており、データは順調に集積されている。日立システムズ株式会社製の疲労・ストレス測定システムを予定通り購入し使用方法を検討した。プレテストは平成30年度に実施予定である。
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今後の研究の推進方策 |
1.平成29年度の結果を参考に、唾液採取時期を決定し唾液中オキシトシン濃度の推移を解析する。また、平成29年度の結果からオキシトシン値のみではなくコルチゾール値をともに測定することで、それぞれのホルモンが及ぼす影響を詳細に分析できると考えたため、具体的な方法を検討していく。 2.平成29年度の結果をもとに検討した結果、唾液中のみでなく血液中の値を検討する必要があると考えた。計画を変更しオキシトシンおよびコルチゾール値について血液中からの測定を検討していく。 3.オキシトシン・コルチゾール値に併せて母親の精神的安定性について調査していく。(質問紙調査および疲労・ストレス測定システム)
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画で見込んだ額よりも安価で唾液中オキシトシン濃度測定が実施できたため。 その分、次年度使用金額に組み入れ、唾液に追加し血液中濃度測定や消耗品に使用していく予定である。
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