令和元年度は、血液データの追加採取と今年度までに得られたデータの分析を行った。研究協力者のうち妊娠末期採血の同意が得られた36人の血清中オキシトシン値の平均は11.3±6.1pg/ml、血清中コルチゾール値の平均は249.1±88.0ng/mlであった。初産婦(n=22)の血清中オキシトシン値の平均は12.3±6.5pg/ml、経産婦(n=14)は9.7±5.2pg/mlであり、初経産での有意差はなかった。また、初産婦(n=22)の血清中コルチゾール値の平均は254.0±86.1ng/ml、経産婦(n=14)は241.3±93.7ng/mlであり、同じく初経産での有意差はなかった。 分娩時臍帯血採取の同意が得られた者は55人で、平均分娩週数は39.5±1.3週であり、そのうち経腟分娩が37件(67.3%)、帝王切開が18件(32.7%)であった。得られた臍帯血清中オキシトシン値の平均は、経腟分娩が38.1±35.3pg/ml、帝王切開が17.9±10.7pg/ml、臍帯血清中コルチゾール値の平均は、経腟分娩が112.5±55.3ng/ml、帝王切開が43.2±31.4ng/mlと、両者において経腟分娩の方が有意に高い結果となった。 精神的安定性については、疲労ストレス測定システムを用い自律神経の変動を測定し、妊娠後期と産後入院中の研究協力者15人からデータを得た。母子の愛着形成について行ったアンケートは36人から回答を得た(回収率51.4%)。両データの解析はこれから実施予定である。 現在、本研究で得られたすべてのデータより、オキシトシン値・コルチゾール値に影響を及ぼす因子について母親の精神的安定性や母子の愛着形成との関連、その他産科学的因子について探索中であり、解析が終了した時点で論文として発表予定である。
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