研究課題/領域番号 |
17K17470
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
清水 彩 神戸大学, 保健学研究科, 助教 (90552430)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 早産児 / 家族 / 体動 / ファミリーセンタードケア / ヘルスリテラシー / ICT / 新生児集中治療室 / 環境 |
研究実績の概要 |
平成30年度は、主に目標1):新生児集中治療室に入院する子どものご家族が期待するコンテンツ【媒体作成】に取り組み、2種類の調査を実施した。 調査(1):早産で出生して退院前の児の体動を解釈し、ケアに活かす過程を明らかにするために、新生児集中治療室に勤務する看護者3名に、修正35週以降頃の児のケア場面を想定したインタビュー調査を実施した。その結果、沐浴、授乳、元気さ、ポジショニング、覚醒状態に関連する判断した後に、ケアに活かしており、特に、沐浴、授乳、元気さ、呼吸、ポジショニングについては、家族とその過程を日常的に共有していた。 調査(2):早産児の状態を反映する指標としての体動の信頼性・妥当性の検証は、工学系の専門家の助言を得て、調査(2)-1:閉鎖型保育器内に収容されている早産児16名の全身状態を器外から24時間録画し、そのうち3例(修正在胎週数32週)について、体動による差分値と看護師の直接ケアと接近について記録した。看護師は、直接ケア(7.3~18.7%)の他、直接ケアはしないが接近(3.3~6.5%)を常に一定時間行っていることが共通している一方で、個人差も大きかったが、体動とケアコンタクトとの関連を視覚的に概観できた。加えて、調査(2)-2:在胎25週で出生後、修正在胎週数28週,30週,31週,32週の4回測定した1例について、交絡因子である器内の照度と音圧の推移を検討した。想定していた昼夜による違いは照度でのみ生じ、音圧では差が生じなかった。また、装着する呼吸器の影響で、終盤は有意に高音圧に推移しており、音刺激により体動が誘発している可能性があった。 以上より、平成30年度は、早産児のさまざまな時期における看護者のケア実態を明らかにしたことで、場面を想定して、児の体動による状態の解釈や環境の変化を伝えるツールを作成することで、ご家族の理解を助けると示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度では、【評価指標作成】と【媒体作成】の精選するために、早産児の体動に関する先行調査を、計画通り実施した。 医療職者が早産児の「体動」を児のサインとして読み取り、ケアに活かす過程を明らかにすることを目的として、1)早産児で生まれたお子さんが退院前となり、ご家族が育児を主体的に行う前の時期については、看護師へのインタビュー調査を実施した。同時に、2)早産児で生まれて保育器内で過ごすお子さんへのかかわりの実態については、保育器外にカメラを設置し、24時間録画した画像を用いて、事後に差分処理により解析した。早産児の状況と体動の特性との関連、そして、看護師が接近したり、直接ケアをしたりする様子の関連を分析している段階である。 成果報告は次年度になるが、保育器内とコット移床後と、状況別での実態を明らかにすることができたことから、次年度の【評価指標作成】と【媒体作成】に向けて、概ね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、平成29年度に取り組んだ海外で既存のツールの他、「体動」という、児の様子を理解するのに必須だが、未だ積極的には取り組まれていない内容について吟味することができたため、ツールに加えるべく【評価指標作成】と【媒体作成】を進める予定にしている。そして最終年度の【介入研究】をめざす予定である。 【媒体作成】のコンテンツについては、先行研究と先行調査より、沐浴、授乳、元気さ、ポジショニング、覚醒状態に関連する判断時にケアに活かしている実態を考慮して作成するとともに、文字のみならず、映像等についての使用も考慮して、コンテンツの試案を作成し検討する(倫理審査申請予定)。また、体動については、激しくなる際の予兆についても検証する。また、そのツールは、早産児のみならず、染色体異常、難病等の児のご家族との交流も通して、新生児集中治療に入院するお子さんのご家族の体験談を伺い、適切な情報提供を得るための相談先等についても情報収集を行う。 【媒体作成】の情報提供方法としては、Booklet版とICT版の両方の作成を、標準ケアとの混乱を避けるために、研究対象施設で既に使用されているツールの確認を含め、調整を進めていく予定である。 【評価指標作成】の質問紙について、お子さんの体動に関する情報を得ることは、へルスリテラシーが高まるのみならず、母親の育児への自信やメンタルヘルスの改善につながるため、関連する尺度の併用の検討も進める。引き続き、質問紙の内容とともに、使用するタイミングや負担度も考慮して精選する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 平成29年度の研究成果をもとに、平成30年度の研究計画を変更したことに加えて、【媒体作成】にかかる支出と平成30年度の成果報告(国内・国際学会ともに)次年度に繰り越しとなったことから、研究計画の調整を行ったため。 (使用計画) 平成31(令和元)年度の実施計画にて執行予定である。
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