研究実績の概要 |
新生児集中治療室で行われている,親が子を肌と肌で触れあうように抱くカンガルーケアは,児の死亡率の低下や体重減少を防ぎ,親と子の愛着を促進するとされている.早産児・低出生体重児の自律神経におけるカンガルーケアの影響を確認しようと検討した. 早産児・低出生体重児の4症例に対し,新生児集中治療室にて既に児に装着されている心拍モニターから,カンガルーケア未開始時期,カンガルーケア(初回,2回目,3回目)実施時と,各々の直前30分~1時間の児の心拍データを抽出した.対象者登録時点で児の平均修正週数は34週,平均体重は1325gであった. 得られた心拍のR-R間隔をHRDI-001 Ver.5.00(株式会社クリオテック)を用いて算出後,Kubios HRV Standard ver.3.4.3(Kubios)とMatlab Runtime ver.R2020a(Math Works)を用いて心拍変動のスペクトル解析を行い,低周波成分(Low Frequency,以下LF)と,高周波成分(High Frequency, 以下HF)の比から,カンガルーケアが児の自律神経活動に及ぼす影響を確認した.HFは副交感神経活動の亢進を示す指標,LFとHFの比(LF/HF)は交感神経活動の亢進を示す指標であり,副交感神経活動が亢進した時減少し,交感神経活動が亢進した時増加する. カンガルーケア未開始時期のLF/HF比(5.0~7.5)に比べて,カンガルーケア時のLF/HF比(3.0~6.3)は,11回中7回減少した.また,カンガルーケアを行う直前のLF/HF比(3.0~8.9)に比べて,カンガルーケア中のLF/HF比(3.0~6.0)は11回中7回減少した.カンガルーケアによって児の副交感神経が亢進する傾向が示されたが,症例数が少なく検定は行えていない.今後更に症例を増やし,検討を続ける.
|