本研究の目的は、治療に関する明確な倫理的意思決定がなされないまま長期(出生から1か月以上)にわたり状態が変化しない、もしくは緩やかに悪化し、死亡退院に至った児をケアする看護師のPre Death期における精神的負担とその要因を明らかにすることであった。 そのため、平成29年度にはPre Death期の児の看護経験を持つ看護師を対象に、Pre Death期・Active Dying期・After Death期のそれぞれの時期における看護における精神的負担とその要因(倫理的意思決定、倫理的意思決定への参加、治療方針への自身の意見の反映など)について、8名から聞き取りを行った。 平成30年度・31年度にはプレインタビューの解析を行い、Pre Death期における精神的負担とその要因についてKJ法に基づいた分析を行った。その結果、8名の看護師の平均年齢は39.1才であり、経験年数は17.9歳、NICU平均年齢は13.6年であった。看取りの経験件数は、10件以下が5名、10~20件が1名、30件以上が1名、(経験が多いため)正確な件数は不明が1名であった。 対象となった児の疾患は26疾患と多岐にわたっていた。そのうち重複した疾患は7つであり、もっとも多いものは5名の看護師が回答した18トリソミーであった。 精神的負担の要因については解析中であるが、両親や医師との関係性や方向性の違いによるもの、物理的な受け持ち人数の多さによる細やかなケアの不足、子どもに負担のないケアを提供できるかどうかなど手技についての不安も経験年数に関係なく見受けられた。 質問紙の作成と配布による全国調査を実施には至らなかったが、精神的負担の要因を引き続き分析することで看護師のメンタルケア及び職務負荷の軽減に働きかけることが出来るマニュアルや、現場に還元できる方法について検討を行っていく。
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