本研究は、産後耐糖能が正常化した妊娠糖尿病(以下,GDM)既往女性の産後の支援体制を確立するための研究である。 研究1:大阪府におけるGDM合併妊婦の病診連携と産後のフォローアップ体制の現状を調査した。大阪府で分娩を取り扱う医療施設、全161施設に質問紙法調査を行い、57施設(30病院、27診療所)の回答を得た。57施設のうちGDM合併妊婦の受入れ施設は17施設(16病院、1診療所)、送出し施設は25施設(4病院、21診療所)、受入れ・送出しのない施設は15施設(10病院、5診療所)であった。受入れ・送出しのない施設のうち病院7施設は、小児科・内科・糖尿病代謝内科の3診療科を有し、糖尿病専門医が血糖管理を行っていた。分娩を取り扱う48施設のうち26施設(54%)は、産後の耐糖能評価を実施しており、このうち18施設は内科医もしくは糖尿病専門医が血糖管理を行っていた。GDMの血糖管理に必要な診療科と専門医を有しているにもかかわらず、一部の施設では妊婦の受入れを行っていなかった。 研究2:将来の2型糖尿病発症率が高率にも関わらず、産後の耐糖能検査を受検しないGDM既往女性(以下、未受検者)が問題であり、未受検者の将来の2型糖尿病発症リスクの保有状況を調査した。対象者117人のうち、未受検者は40人(34.2%)、受検者は77人(65.8%)であった。欠損のあるデータを除いた80人(未受検者30名、受検者50名)を対象に、2型糖尿病発症リスクのハイリスク群とローリスク群に区分して検討したが、受検の有無には有意な関係はなかった。しかし、GDM既往女性80名のうち11名(13.8%)が2型糖尿病発症のハイリスク群にも関わらず産後耐糖能検査を受検していなかった。産後耐糖能検査の受検率を向上させることが将来の2型糖尿病患者の予防や早期発見に重要であることを示していた。
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