前年度までの,闘病体験を親が意味づけていく過程に関する研究で明らかとなった,内的な熟考というよりも実生活への順応を通した現状への統制感覚の確保の重要性に着眼し,本年度はその要素の一つで乳幼児の小児がんの子どもをもつ親の多くに共通してみられる子どもの内服の苦痛における看護援助のあり方を検討するため,長期の内服援助を実践する看護師へのインタビュー調査を通じて看護の実践知(意識と行動)の可視化を試みた。 看護師経験14から27年,小児看護経験7年から19年の看護師5名(うち3名小児看護専門看護師)にインタビュー調査を行い,得られた内容を質的帰納的に分析した。 その結果,看護師の意識では,「内服の始まりが大切だ」「退院後を予測する」といった飲み始めや退院前などの内服を重要な場面ととらえていることが明らかとなった。そのうえで行動として,「必要性の理解を確認する」「説明する」といった本人へのアプローチ方法,「親と関わる」「他職種と連携する」といった周囲との共同支援によるアプローチ,さらに「飲ませ方を工夫する」といった看護師自身の内服援助に関するアプローチを選択していた。先行研究と比較すると,「内服の始まりが大切だ」「内服期間を意識しない」「毎日の内服継続が大切だ」「継続できないこともある」「患児が安心して過ごせるように関わる」「退院後を予測する」「他職種連携を志向する」「患児は内服することを理解する」「患児は内服できるようになる」の9つの意識に関するカテゴリと,「退院後の内服を後押しする」「他職種で連携する」の2つの内服援助に関するカテゴリは,特に長期内服に焦点を当てたことで新たに抽出された要素と考えられた.これらの視点を,日々の内服においてキーパーソンとなる家族と看護者が共有することで,実生活への順応を通した現状への統制感覚の確保に繋がる可能性があると示唆された。
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