本研究の目的は行政機関で母子保健に携わる保健師や助産師の社会的ハイリスク妊婦の特定方法と支援の実際について明らかにすることを目的として研究を行った。5つの行政機関で母子保健に携わっている保健師や助産師9名を対象としてインタビュー調査を実施し、質的分析を行った。 その結果ハイリスク妊婦の特定については「早期発見のためのスクリーニングシートの使用」「ハイリスク妊婦の特徴と思われる言動や容姿の確認」「看護者の専門職としての経験値と勘」「スクリーニング結果を再度同僚や上司と分析」があり、その後の支援は「配属部署の職員や看護職と情報の共有」「妊婦との信頼関係の構築を目指す」「集団指導や個別相談への誘い」「他部署や医療機関との連携」が抽出された。特定の難しさとして「家庭訪問しないと状況が分からない」「スクリーニングシートの有効性に疑問」「対応している看護職の能力に左右される」「行政機関に情報が入らない妊婦」の4カテゴリが抽出された。 行政機関によりスクリーニングシートの内容が異なり、地域の特性も踏まえた内容が含まれていた。しかし、スクリーニングシートのみでは特定が難しく、支援にあたる保健師や助産師の経験値や観察点が大きく影響していた。地域の特性を生かしつつもリスクを特定するための標準化した指標の作成は必要ということが示唆された。
|