研究課題/領域番号 |
17K17490
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
遠藤 晋作 名古屋市立大学, 看護学部, 講師 (60750883)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 病気説明 / 先天性心疾患 / 学童期 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、先天性心疾患をもつ学童期の子どもに対して母親が行う病気説明の構造を明らかにすることである。本研究は第一研究と第二研究で構成している。第一研究では、小児科病棟へ検査入院をする先天性心疾患をもつ学童期の子どもの母親を対象として、子どもに対して行っている病気説明の具体的な内容と、その内容の選択要因について半構成的面接により調査する。第二研究では、第一研究の結果をもとに、患者会に所属する学童期の子どもの母親を対象とした無記名自記式質問紙調査を行い、先天性心疾患をもつ学童期の子どもに対して母親が行う病気説明モデルを作成することでその構造を明らかにする。この二段階の研究結果を複合することで、より詳細な概念構造を目指している。 平成29年度は、第一研究の調査を計画通り終了し、SCATの手法を用いて分析を開始した。SCATは、大谷によって開発された分析方法で、マトリクスの中にセグメント化したデータを記述し、そのそれぞれに4ステップのコーディングと4ステップ目から導いたテーマ・構成概念から理論記述を行っていく分析手法である。言葉の背景や独自性を反映できること、言葉の意味(裏側)を構造化できることがこの手法の特徴であり、医療、社会学、教育学など、様々な研究分野で用いられている。研究者は開発者である大谷氏が主催するSCATのワークショップ(於:日本質的心理学会第13回大会)に参加し、かつ分析においてもSCATによる分析の実績をもつ研究者に助言を受けながら実施することで、分析の信頼性を担保した。分析の途中経過については、平成30年度開催の日本小児看護学会第28回学術集会の学会発表に投稿し、採択を受けたため発表を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画において、平成29年度中に第一研究の調査を終え、分析を行う予定であった。実際の研究の進捗状況として、年度内に調査を終了し、予定通り分析に取り掛かることができている。また分析を、当初の分析方法から変更することなく、SCATによる分析の実績をもつ研究者に助言を受けながら実施することで、信頼性の担保された分析を行うことができている。当初の予定では、「子どもに対して母親が行っている病気説明は具体的な内容」および「病気説明を行う、行わないを決定した選択要因」を明らかにすることを想定していたが、分析の過程において関連要因も含めて、病気説明構造そのものへの考察が進められていることも進捗が順調である要因の一つと考える。また進行中の分析を継続することで、平成30年度中に予定通り、学会誌への論文投稿および平成30年度中の第二研究への取り組みを行う見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
第一研究における分析を平成30年度前期中に終了し、学会誌への論文投稿を行う。また途中経過について、平成30年度開催の日本小児看護学会第28回学術集会にて発表予定であるため、他の研究者との意見交換を行い、新たに得た知見を研究内容に反映する機会を得ていく。 また第一研究の論文投稿とともに、第二研究の準備および調査を進めていく。第二研究は患者会に所属する先天性心疾患をもつ学童期の子どもの母親、200人程度を対象とした質問紙調査である。10人程度の母親にプレテストを行った後、調査協力を患者会に依頼し、郵送による無記名自記式質問紙調査を行う。回収率を上げるため、質問紙による回答に加えてWEBを使用した回答の併用も検討している。調査内容の回収後は、分析を行う。分析には統計処理用ソフトIBM SPSSおよびAmosを用いる。因子分析により、設定した質問項目から病気説明とその選択要因の因子を抽出し、各質問項目を観測変数、因子を潜在変数と設定し、共分散構造分析を行い、子どもに対して母親が行う病気説明モデルを作成する。そこから、子どもに対する母親の病気説明の構造、ひいては子どもに対して母親が病気説明を行うための支援を示唆することを目指す。平成31年度前期までには第二研究の調査を終え、分析を実施していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
経費使用金額の関係上、残金となったため、平成30年度の経費に追加して使用していく。
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