発達障害児、養育者、家族は、困難を抱えているが、その多くは良好に適応している。困難な状況に適応するための要素は、発達障害児の支援に役立つことが推察される。また、学術的には、困難な状況に適応する過程は、レジリンスと定義され、その要素が検討されてきた。研究代表者らは、発達障害児をもつ養育者のレジリエンスの要素を明らかにしてきた。レジリエンスの概念は、発達障害児本人、家族にも関わるものであると考えられる。そこで、本研究では、発達障害児本人と家族のレジリエンスの要素を明らかにし、レジリエントな支援体制の構築に向けた提言を行うことを目的とした。 2017年度には、発達障害児をもつ母親を対象にして、家族のレジリエンスに関する調査を実施し、家族レジリエンスの要素が母親の心理的苦悩に好ましい効果を与えていることを明らかにした。2018年度で、そのデータを再解析し、家族レジリエンス要素質問票(Family Resilience Elements Questionnaire)の因子構造を確認し、短縮版を作成した。さらに、短縮版を用いて他の尺度との関係性を検討し、家族のレジリエンスの要素を多くもつ母親は養育者のレジリエンスの要素を多くもつ関係があることを明らかにした。また、大学生を対象にした調査を実施し、本人のレジリエンス要素(Connor-Davidson Resilience Scale)、発達障害特性、オドボール課題中の事象関連電位を計測した。そして、事象関連電位成分、発達障害特性、本人のレジリエンスの関係性を検討した。以上の結果に基づき、発達障害児を取り巻く環境について議論することで、発達障害児に対する支援体制を考察した。
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