本研究の目的は、高齢者ケアに従事する介護職・看護職の腰痛と腰痛予防への取り組みの実態、腰痛と生活や環境を含む要因との関連を明らかにすることである。令和元年度は高齢者ケアに従事する介護職・看護職の腰痛に関する全国調査結果から、腰痛と日常生活、職場環境を含む心理的要因との関連について分析することを目的とした。全国の介護保険施設400施設の介護・看護職を対象に行った無記名質問紙調査結果(各施設5名に協力を依頼し、641(32.1%)の回答があった)のうち、回答に不備のない609(30.5%)を分析対象とした。調査項目は腰痛と日常生活に関しては姿勢や身体活動、仕事への影響、職場環境については腰痛予防研修やマニュアルの有無、個人特性については心身の健康状態、睡眠、職務満足・仕事継続意思、日本語版努力-報酬不均衡モデルオーバーコミットメント(OC)(6項目、Range6-24;堤他、2001)等とした。 1.腰痛ありの割合は全体で約35.0%、介護職では53.6%、看護職では27.8%であった。腰痛の生活への影響としては同じ姿勢の継続が困難60.9%、腰痛のため仕事がつらく横になりたいことがある33.6%、歩行・階段昇降困難が31.1%であった。腰痛予防研修受講なしは41.9%、腰痛予防マニュアルなしは48.5%であった。 2.腰痛ありにおいて腰痛予防マニュアルがない、心身の健康状態・睡眠の質がよくない、職務満足・仕事継続意思がない、OC値ハイリスクの割合が高かった。 本研究対象の約4割に腰痛を認め、歩行等日常生活に影響があった。健康状態・睡眠、職務満足・仕事継続意思、仕事に過度に傾注せざるを得ない状況等の要因が腰痛に関与する可能性が推測された。腰痛予防対策としてマニュアル等整備の他、身体・心理的負荷の軽減を図り、意欲を持って仕事できるような勤務環境を整備することの重要性が示唆された。
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