本年度は、昨年度から継続して以下の分析と実験を行った。分析としては、昨年度までに取得した安定期の慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者データおよびCOPDのない若年成人の6分間歩行試験(6MWT)を実施したデータを分析した。診療録から患者背景を取得し、本研究で共同開発したウェアラブルな呼吸数モニタにより呼吸数を測定し、他に心拍数、呼気終末CO2をモニタリングした。二元配置分散分析により呼吸数の時間変化をCOPD群と健常群の間で比較した。歩行距離と呼吸数の関連を相関分析および多変量重回帰分析により検証した。 包含条件を満たした59名のCOPD患者と23名の若年健常者のデータを分析対象とした。COPD患者は、安静時呼吸数および歩行1-2分目、終了後呼吸数が有意に若年成人よりも高かった。多変量回帰分析の結果、歩行6分目の呼吸数が高いほど6分間歩行距離が有意に高くなっていた。 研究活動の二つ目として、COPDをもつ患者の6MWTにおける呼吸数の特徴を検証するため、地域在住の健常高齢者を対象に6分間歩行試験のデータを収集した。測定は、神戸大学保健学研究科の石川朗研究室と共同で実施し、新型コロナウイルス感染症の流行が一時的に落ち着いた時期に20名超のデータを収集することができた。呼吸数はCOPDをもつ患者および地域在住高齢者とも個人差が大きいがCOPD群の6 分間歩行試験の呼吸数の特徴として安静時より多く、1 分目から6分目の呼吸数上昇幅と歩行終了後の呼吸数減少幅が小さいことが分かった。 その他に、ウェアラブルな呼吸数モニターの妥当性を検証した分析結果を英語論文にまとめており、国際学術雑誌へ投稿中である。
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