研究実績の概要 |
本研究の目的は、主観的な介護認識と認知症高齢者の在宅介護者の介護行動の関連性を検討し、介護の認識・行動の両側面からの在宅介護支援方法を検討することである。最初に実施した予備調査の結果を踏まえて、本調査を認知症高齢者の在宅の家族介護者26名と認知症高齢者26名から同意を得た。その中で、欠損値の認められない21名を解析に用いた。 調査方法は、研究協力を得た地域にある医療機関を介して、調査票を用いた聞き取り調査及び測定器具を用いた調査を家族介護者に実施した。介護行動時における測定機器による調査時期は、研究同意を得られた対象者に、聞き取り調査から3日間の測定を行った。主な調査項目としては、介護者・認知症高齢者の概要(性別,年齢,介護年数,要介護度等)、の介護認識(介護の肯定的認識,介護負担感)、自己効力感、介護者の身体状況(血圧、脈拍等)、介護に関連する行動、身体活動量、認知症高齢者の認知障害、BPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)の症状である。 対象者の介護行動時の脈拍変化割合と介護認識の関連を検討した。介護行動前後の変化割合と介護負担感、肯定的認識、自己効力感では有意な関連は認められなかった。介護行動前と介護行動後最大脈拍の変化割合と介護負担感、肯定的認識、自己効力感においても有意な関連は認められなかった。しかしながら、介護行動前脈拍と介護行動後最大脈拍では統計的に有意な差が認められた。 この結果より、在宅介護の支援のためには介護負担感等の主観的な認識のみでなく介護行動と脈拍等の生体データもアセスメントする必要性が示唆された。本研究により、認知症高齢者の在宅介護者の包括的な理解につながり、主観的及び客観的な視点の双方を含めた支援により、効果的な在宅介護支援につながる可能性が示された。
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