研究課題
統合失調症は、特有の認知機能障害が陽性症状の維持・悪化や治療中断に影響を及ぼし、当事者のQOLを著しく低下させることが知られている。社会認知機能の障害に対して有効な心理社会的介入の一つにメタ認知トレーニング(Metacognitive training: MCT)がある。しかし、提供場面が限られ普及が進んでいない。一方、精神科訪問看護は生活に密着した援助と並行し、心理社会的支援を提供する上で活躍が期待されているが、十分な時間確保が困難であることや、昨今ではCOVID-19の影響により訪問での支援機会が減少している。そこで本研究では、精神科訪問看護ステーションへ個人向けメタ認知トレーニング(Metacognitive training plus: MCT+)を導入し、統合失調症により訪問看護を利用する当事者へ提供し、その有用性を検討した。また、精神科訪問看護における心理社会的介入の実施に当たり、訪問看護特有の困難が想定され、精神科訪問看護師へのインタビューを通してその詳細を検討した。統合失調症により訪問看護を利用している 11 名が研究に参加し、6 名が訪問看護師による全 11 モジュールのMCT+を完遂した。参加者個別の結果として、完遂した 6 名中 5 名は、開始時から終結時にかけて陽性症状および抑うつ症状が改善し、当事者の苦痛となりやすい陽性症状や抑うつ症状に対して有用であることが示唆された。精神科訪問看護師へのインタビューの結果、看護師は訪問看護の利用者に対して、【認知行動療法を習得する上での困難】や【認知行動療法を訪問看護師が利用者に適用する上での困難】を感じており、また、【提供を困難にする訪問看護特有の機能と構造】を認識していることが明らかとなった。これら提供上の課題の克服や、非常事態下での継続的な支援に向けて、提供方法の工夫や ICT の活用などが必要である。
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Journal of International Nursing Research
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