2022年度は、既存のデータを使用した以下の研究を行った。高齢者の健康管理ツールとして期待される腕時計型脈拍・加速度計(PS)を用い、自身の生活リズムを知るための健康講座(一般介護予防事業)を開催し、口腔機能とPSにて測定した睡眠・活動データとの関連を分析するとともに、講座の有用性を検討することを目的とした。2015年~2016年に1地域包括支援センターにて実施された一般介護予防事業に参加し、研究参加の同意が得られた65歳以上の地域在住高齢者32名を対象とした。口腔機能は、基本チェックリストの口腔機能に関する3項目、義歯の有無、残存歯数、未処置歯数、咬合力および咀嚼能力、口腔関連QOL評価した。睡眠・活動データについては、1週間のPSの装着を依頼し、得られたデータを専用ソフトにて分析し、深睡眠時間、身体活動時間、精神活動時間、体動あり時間を算出した。その結果、基本チェックリストにて口腔機能の低下(2項目に該当)がみられたのは10名(31.3%)であった。残存歯数20歯以上と未満の2群で睡眠・活動データおよび口腔機能の比較を行った結果、深睡眠時間、咬合力、咀嚼能力に有意差が認められた(p<.05)。残存歯数20歯以上の群では20歯未満の群より深睡眠時間が有意に短かった。対象者の中にはオーラルフレイルのリスクを抱える高齢者も3 割程度存在し、他の調査より割合が高かったことから、PSを使った睡眠・活動時間の測定を行う健康講座は、介護予防の必要な高齢者の把握を促す可能性を示唆した。 研究期間全体では、covid-19の影響もあり介入調査まで実施できなかったが、PSと健康との関連についての示唆を得ることができた。
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