精神科病棟の保護室で隔離や身体拘束を受けている精神疾患患者に対して、精神科看護師が行動制限最小化に向けて行う共同意思決定プロセスを明らかにすることを目的に、3施設の精神科病院で長期的に保護室を使用している患者への看護実践を行っている看護師18名に面接調査を実施した。調査内容は保護室内での生活場面・看護計画や援助内容・隔離や身体拘束の解除に向けての意思決定支援であった。共同意思決定のプロセスとして、看護師は、患者の精神症状の日内変動に着目して、開放観察による刺激の増大による患者の状態変化を予測しながら、開放観察が実施可能な精神状態や行動について患者と共通理解を持てるように説明していた。開放観察中は、患者の精神状態の変動に最大限の注意を払い、患者の視点に立って、病的体験の影響を受けにくい安心できる環境の構築に努めつつ、患者との対話を通して、どのような環境であれば脅かされずに過ごせるのか、傾聴しつつ提案するというアプローチを繰り返していた。一方で、精神症状の安定化を図ることが非常に困難であり、予測不能な衝動行為に対して、開放観察を中断して、保護室での行動制限を再開するという対応を余儀なくされていた。精神状態が不安定な状況が生じる時には、看護師は、できるだけ患者の対処方法について本人の自己決定に委ね、できるだけ一方的に対処方法を提案するという対応は避けていた。不穏・興奮状態が長く続く状況であれば、看護師から対処方法を提案しつつ、患者の反応を見定めていた。さらに、患者の社会性を伴う行動がセルフケアとしてどの程度実施できるのかを注意深く見定め、保護室にいても退院時に患者が身につけるセルフケアを患者と共に考え、到達可能な目標を明確にして、患者の社会的な行動の活性化につなげる働きかけも行っていた。
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