研究課題/領域番号 |
17K17521
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研究機関 | 朝日大学 |
研究代表者 |
桐山 啓一郎 朝日大学, 保健医療学部, 助教 (40790960)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 身体拘束 / 一般病床 / 看護 |
研究実績の概要 |
一般病床における身体拘束の実態調査のデータ収集までを実施した。具体的には、東海4県(愛知県、岐阜県、三重県、静岡県)で一般病床を有する全445病院を対象に郵送式質問紙調査を実施した。 調査は多機関に多数の調査用紙送付による郵送費の無駄を防ぐため2段階で実施した。まず、対象の445機関に本調査の概要と協力願を送付して、調査への協力を申し出てもらった。その後、協力を申し出た65機関を対象に実態調査を行った。実態調査の回収は43機関(回収率9.66%)であった(締め切りは当該年度末であったため、回収率が変化する可能性あり)。 実態調査は一般病床を有する120病棟程度、および身体拘束実施中の550名程度の患者のデータを得た。詳細なデータ数は欠損値等の取り扱いがあるため、本報告時点では確定していない。身体拘束患者は、当該年度のある1日、正午時点で身体拘束中の患者を対象とした。身体拘束患者は全入院期間中の8割程度の間、身体拘束を実施されていた。このことから、多くの身体拘束実施中の患者は一度開始された身体拘束を解除されることなく実施され続けていることが明らかになった。 調査病棟の全入院患者に占める身体拘束実施患者(延べ数)の割合は、14%程度であることが明らかになった。あくまで延べ数であり、1人の患者が複数の身体拘束を実施されている場合がある。そのため、身体拘束実施患者の割合は今後の分析で変化する可能性はある。しかしながら、精神科病床で保護室隔離や身体拘束を実施されている入院患者の割合は5%程度であり、本調査によって、精神科病床よりも一般病床の方が身体拘束を実施している割合が高い可能性を示唆された。なお、調査した病棟の看護師配置は多くが7対1であり、一般病床の中では手厚い看護体制であった。 次年度前半は、得られたデータを量的かつ詳細に分析し、看護学関連学会等で本実績を公表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度中に身体拘束の実施調査を実施できたため、おおむね順調に進展していると思われる。ただし、実態調査は当該年度の12月ごろまでに実施予定であったが、当該年度の3月に若干遅れた。そのため、当初予定していた外部へのデータ入力について、入力時間を要したため依頼せず、研究代表者が実施した。実態調査の遅れについては、事前調査実施段階で、調査対象者の依頼に予想外の時間を要したためであった。また、データ分析ソフトを当該年度に購入して分析予定であったが、データ収集が3月であったため、統計ソフトでの分析は次年度に予定している。 上記以外で進捗状況は予定通りであった。次年度前半は、予定通り身体拘束実施調査の量的分析を行う予定である。次年度後半は、身体拘束予防及び早期解除の取り組みについての聞き取り調査を実施予定であり、現在、研究計画の倫理審査受審準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
身体拘束実施調査の分析について、分析ソフトを検討中である。当初予定していたSPSSは分析方法ごとにソフトを購入する必要があり、またバージョンアップも頻繁に行われるため、本研究の予算内及び予定期間に質の高い分析ができるかを踏まえて検討している。現在候補に挙がっているソフトは、SPSSのほかに、JMP若しくはEZRである。ソフトの選択に当たっては、統計分野の専門家の意見を集約中である。 また、身体拘束予防・早期解除の取り組みについての聞き取り調査については、調査対象を全国の精神看護・老人看護専門看護師、認知症看護認定看護師としていたが、全国の対象者に調査への協力意向を確認するための依頼分送付に多額の費用を要することや、調査中に新たな専門看護師や認定看護師が認定されることを考慮すると効率的ではないことが考えられた。そのため、公表済みの文献や、看護管理・看護倫理等の身体拘束に関連した学会の発表歴等を考慮して対象を選定することにした。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では、統計ソフトSPSSを購入して、データ分析を行う予定であったが、データ収集が当該年度の3月であったため、統計ソフトの購入が遅れた。そのため、統計ソフトの代金を繰り越した。また、統計ソフトについて、SPSSの値段が高価であるため、より安価かつ信頼性の高いソフトについて現在選定中である。選定は次年度5月までに終え、ソフトを購入予定である。
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