2018年度の一つ目の取り組みとして,模倣要介助者支援体験法が模擬筋力低下者の能力発揮を促すのに有効であるか検証を行った.模擬筋力低下者の離殿時における下肢荷重量について,移乗介助2回目と1回目の差は,対照群で2.6±7.7kg(n=15),模倣要介助者支援体験法群で10.1±8.7kg(n=15)であった.つまり,模擬筋力低下者を模倣した理学療法士を相手に移乗介助体験を積む模倣要介助者支援体験法では,模擬筋力低下者の離殿時における下肢荷重量が対照群と比較して,平均で7.5kg増加する結果となった. 2018年度の二つ目の取り組みとして,移乗介助量把握システムを用い,移乗介助における介助者の腰痛リスク回避能力基盤に関する検証を行った.被検者を対照群(n=15)と模倣要介助者支援体験法群(n=15)に無作為に分け,3日連続で模擬筋力低下者の移乗介助を行わせた(初日に2回,2日目に2回,3日目に1回).その際,模倣要介助者支援体験法群には,初日の1回目と2回目実施の間,2日目の1回目実施前に理学療法士による介入を行った.また,3日目の移乗介助前に,両群の被検者に予告なく模擬筋力低下者の一側下肢の筋出力をさらに制限し,発揮できる力を抑制した.被検者に対して3日目の移乗介助後に模擬筋力低下者の状態について尋ねた結果,対照群では「悪化した」が0名,「改善した」が9名,「よくわからない」が6名であった.一方,模倣要介助者支援体験法群では「悪化した」が12名,「改善した」が1名,「よくわからない」が2名であった.また,両群の条件が同じ初日1回目の移乗介助において,模擬筋力低下者に対する必要介助量と被検者の主観的な介助量の差は40.1±8.6kgであった.介助者は負荷となる介助量を過少評価する傾向があるものの,模倣要介助者支援体験法によって要介助者の状態変化に気付ける可能性が示唆された.
|