研究課題/領域番号 |
17K17534
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研究機関 | 公益財団法人神経研究所 |
研究代表者 |
萱場 桃子 公益財団法人神経研究所, 研究部, 研究員 (20759055)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ソーシャルジェットラグ / 睡眠不足 / 過眠症 / 日中の眠気 |
研究実績の概要 |
本研究は、将来、交代制勤務に従事する者が多い看護学生の集団を対象に、クロノタイプを含む睡眠習慣やソーシャルジェットラグ(個人の持つ概日リズムと社会の時間とのずれにより生じる社会的時差ぼけ)の実態を明らかにし、機序解明を目指すものである。
本研究で用いる評価項目を検討する上で、ソーシャルジェットラグの臨床的意義を明らかにする必要があると考えた。そこで、睡眠専門外来を受診した過眠症患者におけるソーシャルジェットラグの実態と日中機能(眠気、事故歴、健康関連Quality of life)について分析を行った。睡眠不足症候群患者及び睡眠相後退症候群患者では、ソーシャルジェットラグがリズムのずれではなく睡眠不足を反映している可能性が示唆された。患者を対象としたこの研究により、今後実施する看護学生を対象とした調査では、睡眠不足とリズムの双方の影響を考慮する必要があることがわかり、また、過眠症患者との日中機能の水準の比較が可能となった。
今後、看護学生を対象に質問紙調査を実施し、クロノタイプの分布やソーシャルジェットラグを含む睡眠習慣の実態及び関連要因を明らかにする予定である。さらに、一部の学生を対象に、夜間の睡眠や日中の眠気を脳波計測により客観的に評価し、過眠症患者の日中機能の水準との比較も行う予定である。 それにより、看護学生における潜在睡眠障害罹患者の割合の推定やハイリスク群の特定が可能となり、これらの知見は、医療事故防止及び看護師の心身の健康の維持・向上を目指す方策を検討するうえで役立つと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
看護学生を対象とした調査については、所属機関の倫理審査が承認され、現在、調査協力施設である複数の大学においても倫理審査申請中の状況である。そのため、平成30年度は大学生の集団を対象とした調査が実施できる見込みである。 睡眠専門外来の受診患者を対象とした研究も遂行しており、平成29年度は過眠症患者におけるソーシャルジェットラグの実態と意義について、平成30年度は看護職や看護学生である受診患者の睡眠の実態について分析を進めている。 看護学生の集団を対象とした疫学的な研究に加え、睡眠に問題を抱える看護職を対象とした臨床研究も実施することにより、より有用な知見が得られると期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画では看護学生のみを対象にしていたが、睡眠の実態が看護学部(学科)に所属する学生に特有のものであるのか、また、分野に関わらずその年代の大学生に特有のものであるのかを明らかにする必要があると考え、看護学部以外の大学生も対象に追加することとした。 また、一部の学生を対象にする測定調査では、自宅での簡易的な睡眠測定(アクチグラフ等)、研究協力施設(睡眠専門クリニック)での睡眠ポリグラフ検査に加え、反復睡眠潜時検査(MSLT)及び覚醒維持検査(MWT)を実施し、日中の眠気についても客観的に評価していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、質問紙調査や謝金の発生する測定調査を初年度に実施する予定であった。しかし、調査協力施設との調整や倫理審査手続きにより、初年度の実施は困難であり、2年目以降に実施することに変更した。質問紙調査の物品費や郵送費、測定調査の謝金、研究成果の発表に係る旅費や論文投稿費、英文校正費として使用予定である。
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