研究課題/領域番号 |
17K17536
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
成瀬 昴 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 講師 (90633173)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 地域包括ケア / 通所介護 |
研究実績の概要 |
<概要> 研究全体の方針づけのための文献レビューとヒアリングを行い、通所介護事業所の機能として「地域高齢者の援助ニーズの早期発見」がある可能性を特定した。そのため、まずは地域法活支援センターの職員への聞き取り調査・事例分析を行い、現状と課題を整理した。 <1:文献レビューとヒアリング> 国内外の通所介護・Adult day care serviceに関する文献をレビューし、その機能を体系的に整理した。さらに、都内2箇所の通所介護事業所職員へのヒアリングを行った。これにより、通所介護事業所が地域包括ケアシステムの中で新たに発揮しうる現実的な機能として、「地域高齢者の援助ニーズの早期発見」があることを特定した。 <2:地域法活支援センター(以後、包括)の職員への聞き取り調査・事例分析> 都内23事業所の職員各1名の協力を得て、「包括への連絡がもう少し早ければより良い経過をたどれた可能性がある」と考えた事例に関し、個別支援開始までの経緯を聞き取り、包括への情報提供の流れと課題を整理した。まず、十分な経過の情報を得た14事例に着目して分析した結果、経緯の発端として、事例対象者は、生活上の困難をうかがわせる何かしらの状況を呈していたことが語られ、それをサインと呼んだ。サインは、周囲に気づかれない場合、気づかれても周囲が何もしない場合、何かする場合、の3つの経路を通じて最終的に包括に知られることとなっていた。サインの情報が包括により早期に提供されるためには、住民のすぐ近くで普段開いている通所介護のような事業所の職員が、近隣関係のしがらみの中で情報を他者に伝えるきっかけを作ったり、早期の判断に必要な知識を提供したりすることが有用である可能性があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
文献レビューとヒアリングの結果、当初の計画を進める前に、地域住民の中のニーズを明らかにする過程を追加した。そのため、初年度内に実施する予定であった、事業所内でのエスノグラフィーや利用者個票調査の計画を2年度目に引き継ぐこととなった。
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今後の研究の推進方策 |
<1:通所介護の従来の機能とクライエント像を明らかにする> 文献レビューとヒアリング・フォーカスグループインタビューを行い、既存の通所介護のベネフィット項目を体系的に整理する。過去のヒアリングデータ等の再解析と統合する。 <2:通所介護の従来のベネフィットセグメンテーションを行う> 平成30年10月頃に、事業所職員が回答する、利用者のカルテ調査を行う。事業所30~50事業所の管理者に協力を依頼し、利用者約1,500名のデータを収集する。これまでに抽出したベネフィット項目の該当有無を主変数とし、この反応の類似性から利用者のセグメントを作る。これにより、利用者のベネフィットの構造と分布が明らかになると期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)通所介護を対象に、その新たな機能とクライエント像を明らかにすることを目的にした研究の中で、初年度には、既存の事業所内の機能とクライエントについて詳細を明らかにすることを目的にしていた。しかし、通所介護そのものを理解する前に、ヒアリング等を通して、該当サービスが地域包括ケアに貢献しうる可能性を確かめ、今後の方針を決定づけることの必要性が生じたため、もともとの調査に使用する予定だった費用を使用しなかった。
(使用計画)初年度に予定していた、既存の通所介護の利用者像に関する調査を実施するため、これに使用する。
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