心血管病の発症・進展による死亡やQOL の低下を抑制するためには、病初期からの適切な高血圧治療が推奨されているが、わが国の高血圧人口のうち降圧剤治療を受けている者は半数程度でしかなく、高血圧者への受診勧奨と血圧管理とが強く求められている。ところが、具体的な受診勧奨方法についてはエビデンスが不足しているのが現状である。本研究では健診現場での紹介状即日発行による受診勧奨が、継続的な高血圧治療やその後の血圧管理に寄与するかという持続的効果を評価するとともに、その他の生活習慣病への波及効果について評価することを目的とする。 対象健康保険組合では2016年健康診断時にⅠ度高血圧以上を認め、更に2017年健康診断時にⅡ度高血圧を認めた者を対象に、事業所ごとに無作為に2群に割り付け、片群にのみ健康診断の場で医療機関への紹介状を発行するという介入を実施した。また、生活習慣病に関する認識、医療機関受診理由に関する自記式質問紙調査を実施した。 高血圧、糖尿病、脂質異常症に関して、前年の健康診断で異常値であった者のうち、そのことを認識していた者は約半数から7割弱程度であった。年代が上がるほどに認識割合は高かった。治療を開始した者の割合は、異常値を認識していない者で2%程度、認識していた者で20%程度であった。 紹介状発行の介入では、対照群138名、介入群135名を分析対象者とした。介入後6ヶ月以内の外来受診は対照群で19%、介入群で34%であり、介入群で有意に受診割合が高かった。ただし、降圧剤処方割合は対照群16%に対し介入群で23%であり、外来受診は必ずしも降圧剤治療開始には結びついていないと考えられた。1年後の健診での血圧は対照群、介入群で差は認めなかったが、受診した者はしなかった者に比べて収縮期血圧が10mmHg程度有意に低値であった。紹介状発行は外来受診割合を高めることができると言えた。
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