研究課題
H. pyloriのヒトへの感染源を特定するため、前年度に実施した質問紙調査の結果を参考に、同地域において飲料水を含む生活用水、生野菜、そしてペットや野生動物の糞便からなる環境検体73検体を採取しH. pyloriの検出を試みた。H. pyloriの検出にはPCR法を用い、遺伝子の増幅産物をDNAシークエンシングにより解析した。今回採取した環境検体からはH. pylori遺伝子は検出されなかったが、増幅された16S ribosomal RNA遺伝子のシークエンス解析により、動物の糞便からHelicobacter属遺伝子(Helicobacter canis, Helicobacter macacae)が検出された。H. pylori感染と胃がんの発生は関連するが、その感染源は十分に明らかにされていない。本研究ではH. pyloriの感染源を特定することを目的に、胃がんの死亡が多い県内において地域の住民と日常生活環境におけるH. pyloriの蔓延実態を調査した。結果、住民の便検体(90検体)の20%からH. pylori glmM遺伝子が検出された。検出されたH. pyloriのうち、特に胃がんのリスクを高めるとされるcagA遺伝子陽性株は33.3%であった。生活環境検体(73検体)からはH. pylori遺伝子は検出されなかったが、質問紙調査の結果からは動物(主にイヌ)や生活用水等の日常生活環境がH. pyloriの感染源として疑われた。動物の糞便から検出されたHelicobacter属遺伝子の宿主(イヌとサル)は、H. pyloriの宿主になり得ること、あるいは接触によりH. pyloriへの感染リスクが上昇する可能性が証明されている。そのため、H. pyloriの感染源の特定のためには人獣共通感染症の視点も含めた更なる疫学調査の必要性が示唆された。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)
Journal of Microbiological Methods
巻: 163 ページ: -
https://doi.org/10.1016/j.mimet.2019.105653