2022年度に実施を予定していたシスタチンCの測定は新型コロナウイルスの感染対策のため中止したため、これまで調査したデータをもとにデータベースの構築を進め、解析を行なった。関西地区在住の対象者を測定したシスタチンCの平均値は、ベースライン調査で66.3、3年後追跡調査で63.0、6年後追跡調査で60.9(単位はmL/min/1.73m2)であり、追跡年数が経過するほど減少していた。1年あたりのeGFR変化量は平均が-1.33mL/min/1.73m2だった。クレアチニンとシスタチンCによるそれぞれのベースライン調査におけるeGFRの相関係数は0.66(P値>0.001)だった。主要アウトカムである、たんぱく質摂取量とeGFR変化量に統計的有意な関連はみられず、動物性たんぱく質、植物性たんぱく質との関連においても同様であり、CKDステージG3a以上(eGFR60mL/min/1.73m2未満)の対象者に限定しても同じ結果だった。本研究期間内では、クレアチニンを用いたeGFRの変化量とたんぱく質摂取量の関連を調べているが、CKDステージG3a以上の対象者において、総たんぱく質および動物性たんぱく質との間に統計的有意な負の関連がみられ、たんぱく質を多く摂取するほど腎機能が保持される結果が得られている。クレアチンとシスタチンCを用いたeGFR値とたんぱく質摂取量の関連について結果がなぜ異なるのか今後更なる精査が必要であるが、腎機能低下症例も含め、地域在住高齢者は腎機能保持のためにたんぱく質摂取を抑制する必要はないのではないかという結果を得ることができた。
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