研究課題/領域番号 |
17K17565
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
鎌田 瑠泉 北海道大学, 理学研究院, 助教 (40750881)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 細胞分化 / 好中球 / ホスファターゼ / 阻害剤 |
研究実績の概要 |
癌抑制タンパク質p53誘導性Ser/ThrホスファターゼPPM1Dは、種々の悪性腫瘍において過剰発現や遺伝子変異が報告されている。Ppm1dノックアウトマウスが好中球数増大・免疫不全の表現系を示すことから、PPM1Dが免疫系細胞の分化や免疫応答において重要な機能を有していることが示唆されているが、その分子制御機構は不明である。本研究では、『PPM1Dの好中球分化および免疫応答における新規機能を解明すること』を目的として、以下の実験を行った。 (1) 血液細胞分化の研究に広く用いられている急性骨髄球性白血病由来細胞株HL-60をモデル系として選択し、骨髄球系細胞分化におけるPPM1Dの機能解析を実施した。PPM1D阻害剤SL-176によりHL-60細胞が好中球様細胞へと分化することが明らかとなった。PPM1D阻害により、分化マーカーであるCD11bが増加することが示された一方、好中球の機能が低下することを見出した。これらの結果より、PPM1Dが好中球の分化のみならず、その分化後の好中球機能の制御にも関与していることが明らかとなった。 (2) 好中球分化過程においてPPM1Dが制御するシグナル経路を同定するため、HL-60にPPM1D阻害剤を投与した際の遺伝子発現パターンをRNAseqにより解析した。これまでにPPM1D阻害剤により発現が変化する遺伝子群を同定しており、さらなる解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
急性前骨髄急性白血病由来細胞株HL-60を用いた系において、好中球様細胞への分化およびその分化後の機能をPPM1Dが制御していることが示された。さらに、RNAseqによる発現変動遺伝子解析の解析も予定通り進められており、ほぼ研究計画通り達成できていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
(1)好中球分化におけるPPM1Dの標的経路同定 平成30年度は前年度に得られたRNAseqデータの解析を進め、PPM1DがHL-60細胞の分化過程において制御しているシグナル経路を同定する。これまでにPPM1D阻害により特異的に発現が上昇あるいは減少する遺伝子群を同定している。これらの発現を制御している標的経路タンパク質にPPM1Dが及ぼす影響についても、解析をすすめる。PPM1Dはその脱リン酸化基質にリン酸化S/T-Wモチーフや、リン酸化周辺残基に酸性アミノ酸を有することから、標的経路タンパク質のリン酸化周辺配列を解析して基質候補を絞り込み、合成リン酸化ペプチドを用いたin vitro phosphatase assayにより基質を同定する。 (2)好中球機能制御におけるPPM1Dの機能解析 前年度に明らかとなったPPM1D阻害により変化が見られた好中球機能について、その機能制御におけるPPM1Dの影響を解析する。また、HL-60細胞をマクロファージ様細胞へ分化させた際の免疫応答におけるPPM1Dの機能についても解析をすすめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
RNAseq解析の費用の支払いが当初の計画と異なり次年度の支払いとなったため。次年度使用額については、RNAseq解析の費用に使用し、その他は計画通りに使用する予定である。
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