手術用エネルギーデバイスの教育カリキュラム作成のため、実地調査及びヒアリング調査を行い、デバイス先端の余熱による患者熱傷、有害物質を含むサージカルスモーク、超音波凝固切開装置の留意事項といった新たな学習項目を定め、必要な検証実験を実施した。これら新規学習項目の内容を含むビデオ教材・学習教材を開発し、既存の学習教材と統合した。また、手術火災シミュレーション用の模擬炎発生装置を開発し、国内外の実際の医療機関において当該装置が使用可能であることを確認した。今後、模擬炎発生装置を患者マネキンモデルに搭載し、外科医、麻酔医、手術室看護師が手術火災を含むシナリオについてチームトレーニングを実施する。 電気メスなどに代表される手術用エネルギーデバイスの使用により術中出血が減少するなど、その恩恵は計り知れないものがあるが、十分な理解のもとで使用しなければ重篤な合併症を引き起こす。なくてはならない手術機器であるが、卒前卒後医学教育において教育を受ける機会はほとんどない。本研究成果を発展させ、医学教育に本格導入することにより、日本のみならず世界中の手術安全性の向上に寄与するものと考える。その際、外科医のみならず、手術看護師など、手術チーム全体で行うチームトレーニングの要素を取り入れ、安全な手術が行える環境をさらに整えていく。
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