研究課題/領域番号 |
17K17569
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研究機関 | 帯広畜産大学 |
研究代表者 |
木村 賢人 帯広畜産大学, 畜産学部, 准教授 (60596675)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アイスシェルター / 氷冷熱利用 / 製氷環境 / 自然エネルギー |
研究実績の概要 |
研究対象の省エネ型農産物貯蔵庫は貯氷室と貯蔵室からなる。冬期は貯氷室内の通気口が開放され、ここから流入する寒冷な外気のみで氷の製造を行う。夏期は通気口を閉め、断熱施工された壁などから流入する熱によって、製造された氷は徐々に融解する。この一連の水の相変化で創出された低温・高湿な空気は貯蔵室に送風される。しかし、氷の冷熱のみで創出される貯蔵環境は、計画量の氷が製造されないため実用化されていない。そこで本研究では、実験貯蔵庫の貯氷室において、気温、水温、風速の多点観測を行い、製氷環境を明らかにするとともに、製氷に関する改善方法と貯蔵庫の設計指針を検討するものである。 今年度は、12月から貯氷室内で多点観測を開始し、製氷環境の把握を試みた。その結果、今冬はやや暖冬であったにもかかわらず、水温観測の結果から2月までに120トン以上の氷が製造されたことを確認した。その要因は、これまで開放していなかった扉を開放したことにより、通気口の開放面積が拡大し、貯氷室に流入した冷気量が増大したためであった。風速観測の結果から通気口に最も近い地点では、外の風の影響により3m/s以上の風速が観測されることがあった。しかし、通気口から離れた地点では、1m/s以上の風速が観測されることはなかった。詳細な解析はまだ行っていないが、この結果は貯氷室内では空気はほとんど動かず、滞留していることを示唆した。気温観測の結果、貯氷室の気温は通気口からの距離に関係なく、下方ほど低く、上方は高い傾向にあった。この傾向は時間の経過とともに顕著となった。そのため、製氷は下方の貯氷タンクから完了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、製氷環境の把握に必要な基礎データを得ることができた。特に、これまで観測されていなかった風速を観測したことによって、貯氷室内の空気の流れの解析に必要なデータが得られた。ただし、計画していた製氷期間中に通気口の開放面積を変えたときの、貯氷室の環境への影響を評価するデータの取得は、製氷がほぼ完了した2月下旬から3月上旬の2週間しか行うことができなかった。その理由は、今年度は製氷量の確保を優先したことにより、120トン以上の氷の製造が確認されてから通気口の開放面積の調整を行ったためである。ただし、通気口の開放面積の影響を評価する上で、最低限のデータ量は確保できたと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
以下の通り、今年度得られたデータを精査するとともに、冬期に再び観測を行う。 (1)貯氷室内の温度および風速データを解析し、貯氷室内の空気の流れと、外気および製氷状況による貯氷室内の温度変化の傾向について明らかにする。 (2)水温の観測結果から、製氷完了時間は貯氷タンクの位置に違いによってに最大2ヶ月以上の差があった。つまり、貯氷タンクの設置場所によって大きく製氷環境が異なることが明らかとなった。このことから、設置場所の違いによる製氷の効率性を定量化するとともに、(1)の解析結果をもとに、今後の貯氷タンクの設置方法について検討する。 (3)既存の製氷モデルに今年度の観測結果を適用し、その結果からモデルの使用されているパラメータについて検証および調整を行う。 (4)今年度と同様に、次年度も冬期の貯氷室内の製氷過程を把握するため多点観測を行い、2年間の観測結果から(1)~(3)についてを比較・検証を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
風速観測に必要な測器類が当初の予定より安価で購入できたため、残額が生じた。余剰金は、今後の観測に必要な測器の購入および旅費に使用する予定である。
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