• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2017 年度 実施状況報告書

河川増水時の橋台背面盛土の浸食・流出機構の解明と粘り強い対策工法の提案

研究課題

研究課題/領域番号 17K17571
研究機関北見工業大学

研究代表者

川尻 峻三  北見工業大学, 工学部, 助教 (80621680)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード橋台背面盛土 / 河川増水 / 浸食・流出 / 地盤調査 / 表面波探査 / 模型実験 / 開水路実験
研究実績の概要

2016年北海道豪雨災害で顕在化した被害の一つとして,橋台背面盛土の侵食・流失と,それに伴う道路陥没があった.そこで本研究では,既設道路橋と旧鉄道橋の橋台背面盛土の地盤性状を把握するために物理探査やボーリング調査を実施し,橋台背面盛土の地盤工学的な特徴について検討した.また,流水作用時における橋台背面盛土の侵食過程を観察するため,縮尺模型によって再現した橋台背面盛土に対して移動床水理模型実験を行い,橋台背面盛土の侵食状況,間隙水圧挙動,天端沈下の進行過程などについて,詳細に検討した.
橋台背面盛土に対する一連の地盤調査結果から,右岸と左岸では盛土材料の土質は大きく変わらないものの,密度や含水状態が異なっているためにS波速度分布が異なり,盛土支持地盤の性状についても異なる場合があることが確認された.すなわち,盛土や支持地盤の性状が右岸と左岸で異なっている状態で河川増水によって同程度の外力を受けた場合には,盛土の侵食やそれに伴う道路路面・鉄道軌道の崩壊形態が右岸と左岸で異なることが予想され,河川増水によって侵食を受けた橋台盛土を調査する際には,盛土や支持地盤の違いを詳細に把握することが不可欠であると分かった.
橋台を含む模型盛土に対する開水路実験結果から,盛土の侵食は橋台との構造物境界部で進行し,橋台内盛土の侵食と流失が顕著であった.さらに盛土が流失した上部の舗装面でオーバーハング状態となった.このような実験結果は,現地の被災状況と概ね一致していた.また,橋台背面盛土の侵食は橋台と盛土の構造物境界部から局所的に発生し,この侵食が橋台内部へ進行するが,それより背後の盛土のり面付近では,止水域の影響で変状や崩壊の発生は限定的であることがわかった.この結果は,具体的な対策工法の検討や,その施工範囲を決める際に有用な情報になると考えられる.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度は,橋台背面盛土に対する地盤調査を行い,橋台背面盛土の地盤性状について数は限定的ではあるものの特徴的な地盤性状とその把握手法について検討することができた.模型実験については,当初は実験前後の模型橋台に対してX線CTスキャンを行い,その結果から弱部を把握して対策工の実施範囲を検討する予定であったが,先述した地盤調査結果に加えて,橋台背面の内部状況を可視化可能なアクリル製の模型橋台を実験に用いたことで,橋台背面盛土の崩壊メカニズムや対策工の実施範囲について十分な知見を得ることができた.
以上のことから,現時点では当初の計画通り,おおむね順調に進展しているものと考えている.

今後の研究の推進方策

先述したとおりに平成29年度の成果として,一連の地盤調査から既設道路橋や旧鉄道橋における橋台背面盛土について,弱部となり得る領域を判断することができた.また,開水路を用いた一連の模型実験から河川増水時の橋台背面盛土の浸食・流出機構と崩壊範囲を把握することできた.平成30年度以降では当初の予定通り,平成29年度の成果を活かして,橋台背面盛土の浸食・流出機構および崩壊範囲を反映した効果的かつ効率的な対策工について,模型実験を行って検討を進める予定である.

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 6件)

  • [雑誌論文] 橋台背面盛土の地盤工学的な性状把握と水理模型実験による侵食過程の観察2018

    • 著者名/発表者名
      川尻峻三,川口貴之,渡邊康玄,宮森保紀,川俣さくら,御厩敷公平,金子大輝,高橋大樹
    • 雑誌名

      土木学会論文集B1(水工学)

      巻: 74 ページ: I_1273-I_1278

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 盛土内の性状把握に対する表面波探査の適用性2018

    • 著者名/発表者名
      川尻峻三,川口貴之,橋本聖,田中悠暉,中村大,山下聡
    • 雑誌名

      地盤工学ジャーナル

      巻: 13 ページ: 61-74

    • DOI

      doi.org/10.3208/jgs.13.61

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 河川増水時における橋台の洗堀が 構造安定性に及ぼす基礎的検討2018

    • 著者名/発表者名
      鎌田啓一,高橋大樹,宮森保紀,渡邊康玄,川口貴之,川尻峻三,三上修一
    • 雑誌名

      土木学会北海道支部平成29年度論文報告集

      巻: 第74号 ページ: A-33

  • [雑誌論文] 橋台裏の浸食に関する水理実験2018

    • 著者名/発表者名
      金子大輝,渡邊康玄,川尻峻三,川口貴之,宮森保紀
    • 雑誌名

      土木学会北海道支部平成29年度論文報告集

      巻: 第74号 ページ: B-23

  • [雑誌論文] 水理模型実験による橋台背面盛土の崩壊メカニズムと対策工に関する検討2018

    • 著者名/発表者名
      御厩敷公平,川俣さくら,川尻峻三,川口貴之,倉知禎直,渡邊康玄,宮森保紀
    • 雑誌名

      地盤工学会北海道支部技術報告集

      巻: 58 ページ: 97-104

  • [雑誌論文] 2016年8月常呂川洪水における構造物等の被災状況調査2017

    • 著者名/発表者名
      渡邊康玄,早川博,川口貴之,川尻峻三,宮森保紀
    • 雑誌名

      2016年8月常呂川洪水における構造物等の被災状況調査

      巻: 23 ページ: 31-36

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 締固め度を変化させた盛土の降雨による崩壊形態と実効雨量2017

    • 著者名/発表者名
      田中悠暉,川尻峻三,橋本聖,川口貴之,中村大,山下聡
    • 雑誌名

      土木学会論文集C(地圏工学)

      巻: 73 ページ: 276-281

    • DOI

      doi.org/10.2208/jscejge.73.276

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 積雪寒冷環境におけるギャビオン補強土壁の適用性に関する研究2017

    • 著者名/発表者名
      川俣さくら,川口貴之,川尻峻三,中村大,倉知禎直,林啓二,山下聡
    • 雑誌名

      ジオシンセティックス論文集

      巻: 32 ページ: 109-116

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 表面波探査による既設補強土壁のS波速度の測定と評価2017

    • 著者名/発表者名
      小笠原明信,川尻峻三,橋本聖,川口貴之,田中悠輝,中村大,山下聡
    • 雑誌名

      ジオシンセティックス論文集

      巻: 32 ページ: 159-166

    • 査読あり

URL: 

公開日: 2018-12-17  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi