本研究は,河川増水時の橋台背面盛土の侵食・流出メカニズムの解明と,その対策工法の開発に関する研究を行った.北海道では2016年8月中旬に観測史上初めて1週間に3つの台風が続々と上陸し,さらに8月下旬には前線と台風の接近によって北海道の歴史上で最大の降雨災害である2016年北海道豪雨災害が発生した.この豪雨災害で顕在化した被害の一つとして,橋と道路の付け根部の盛り土である「橋台背面盛土」の侵食・流失と,それに伴う道路陥没があった.この道路陥没に気付かず橋台内へ車ごと落下し,増水した河に流されて死者2名と行方不明1名の人的被害が発生した.これらは一連の豪雨災害での死者・行方不明者の半数を占めた. 本研究では地盤工学・河川工学・橋梁工学の教員・学生から協力を受けて分野横断的な体制を築き,体系的な現地調査と実験に取り組んだ.その結果,(1)河川増水によって橋台背面盛土が侵食される領域を明らかにし,(2)この領域に砕石を詰めた鋼製かごおよび補強材で構成される対策工法を施すことが有用であり,(3)この工法は従来工法と比較して簡易で安価かつ北海道の地形に適した工法であることを示した.さらに現在,北見市と共同で新たに開発した工法の実河川への試験施工を実施した,また,国内・国際特許の申請を完了しており,研究成果の社会実装への実現性は高い.
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