研究課題/領域番号 |
17K17572
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
高橋 賢伍 旭川医科大学, 大学病院, 医員 (40646064)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | トロンビン / PARs / PAR-1 / 網膜循環 / 網膜動脈 / 微小循環 |
研究実績の概要 |
豚網膜摘出動脈を用いて、トロンビン (5 mU/ml) は、血管外からの投与では収縮反応が起こるが、血管内からの投与では起こらないことが分かった。これは、血液網膜関門が1kDa以上の分子量の物質を通さないという過去の報告に裏付けられる。トロンビンの分子量は33.6kDaと大きくいため、血液網膜関門を通過することができない。そのため、血管内からの投与では、平滑筋に作用できず、血管収縮反応は起こらないと考えられた。 過去の報告では網膜動脈においてトロンビンは受容体を介さず、独自の酵素的反応により、血管へ作用すると報告されていたが、Protease-activated receptor-1(PAR-1)のブロッカーを用いて、PAR-1を介して収縮反応を示すことが分かった。同様に各々のブロッカーを用いて、収縮反応はProtein kinase CおよびRho associated protein kinaseが関与することが分かった。更に、高濃度のトロンビンは網膜動脈を弛緩させる。そのメカニズムはendothelial nitric oxide synthase依存性であることも分かった。 これらの内容をまとめて、第121回眼科学会総会にて一般口演およびARVO2017にてPosterで報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
豚網膜摘出血管を用いた、トロンビンの網膜細動脈に対する、メカニズムを各種ブロッカーを用いて明らかにした。また、そのデータをまとめて、現在、論文を投稿中である。 ネコを用いたin vivoの血流実験系についても、検討を行なっており、トロンビンの硝子体注射はトロンビンの分子量(33.6kDa)の大きさから硝子体にトラップされるが、トロンビンの受容体である、PAR-1のselectiv agonist(TFLLR-NH2)では分子量(647.82)が小さいため硝子体を通過し、網膜動脈に作用し、血流を悪化させる可能性がドップラー光干渉断層計を用いた測定で示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
豚網膜摘出血管を用いた検討で、明らかになったメカニズムをまとめ、論文として投稿する。 日本生理学会にてPARsの研究の第一人者である平野勝也先生にお会いし、PAR-1のノックアウトマウスを御提供頂けることとなった。今後は、PAR-1ノックアウトマウスを用いて、眼でどのような表現型となるのかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ARVO2017(2017年5月の学会)を旅費として、算定していたが、2017年の4月以前に、旅費を支払っていたため、科研費として算定できなかった。また、画像解析用コンピュータをまだ導入していないため。
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